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米軍の新指針 「使える核」危険すぎる

 戦闘中に核兵器を限定使用する―。米軍がこんな想定を内部の新指針で示していた。昨年公表した「核体制の見直し」(NPR)を土台にして、軍が6月にまとめた運用指針だ。

 トランプ政権は核兵器の小型化を進めている。軍の指針には、通常戦力の延長として核戦力を位置付ける視点が見える。

 小型核は使用のためらいが弱まる懸念がある。歯止めがきかなくなれば、人類3度目の核兵器使用が現実味を帯びてくる事態だ。国際社会は危険な動きをやめるように働き掛けるべきだ。

 NPRは新政権誕生のたびに策定される。オバマ政権は「核兵器なき世界」を掲げて「核の役割低減」を目指したが、トランプ政権は正反対の方向へ転換した。

 ロシアや中国などの脅威をにらんで「大国間競争への回帰」を宣言し、核以外の攻撃を受けた報復でも核を使用するとした。先制不使用を否定し、潜水艦発射弾道ミサイルに搭載する小型核の導入を明記している。

 小型核を配備する理由には、こんな想定がある。

 ロシアが欧州で小型核の使用に踏み切る可能性がある。大規模な被害を生む従来の「使えない核」では反撃できない。抑止するには局地的、限定的に「使える核」の配備が必要になる―。低爆発力の核弾頭は開発コストを安く抑える利点もある、とされる。

 低爆発力といっても、広島型原爆の3分の1程度と想定される。新指針でも「核使用により決定的な結果を残し、戦略的安定を回復する」とする。通常兵器では不可能な甚大な被害を与える狙いに変わりはない。

 小型核は非人道的な破壊力が軽視され、先制使用のハードルを下げかねない。各国が「使える核」を保有しようと軍拡競争が加速し、拡散の懸念も付きまとう。報復では、より高威力の核兵器が使用される危険もある。

 米の専門家は「核戦争が現実のものとなる恐れを高めかねない」と警告している。

 新指針では、爆発後の放射線環境下で作戦を遂行できる地上部隊の能力強化も訴えている。これは抑止力としての役目を超えて、核使用を前提にした具体的な戦術の構築を意味している。

 安倍晋三政権は昨年、小型核導入を含むNPRを「高く評価する」と表明し、「傘」の強化を歓迎した。平和主義を掲げている唯一の被爆国として、国際社会での役割を見誤るべきではない。

(7月30日)

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