長野県のニュース

原爆の日の式典 空疎に響く首相の言葉

 政府は被爆地の訴えを本気で受け止めなければならない。

 被爆から74年を迎えたきのう、長崎市の平和公園で、平和祈念式典が開かれた。

 田上富久市長は「核兵器を巡る世界情勢はとても危険な状況」とした上で「日本は核兵器禁止条約に背を向けている」と批判。「唯一の戦争被爆国の責任として一刻も早く署名、批准を」と求めた。

 広島市の松井一実市長も6日の式典で政府に署名、批准を促している。それなのに安倍晋三首相は訴えを事実上、無視している。広島と長崎の式典で条約には一切触れなかった。

 そればかりか、安倍首相はきのうの式典後の記者会見で、禁止条約について「核軍縮に取り組む国際社会に一層の分断をもたらす」と否定的な考えを表明している。

 条約は、核兵器の開発や実験、使用などを全面的に禁止する史上初めての条約である。前文では核兵器使用による被爆者の受け入れがたい苦しみに留意すると明記している。採択の原動力となった非政府組織(NGO)はノーベル平和賞を受賞した。

 2017年7月に国連で122カ国・地域の賛成で採択されている。これまでに批准手続きを終えたのは25カ国で、条約発効に必要な50カ国・地域の半数だ。

 米ロなど核保有国だけでなく、日本も反対の立場を続けてきた。首相は6日の会見では、米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約の失効についても「米国の問題意識は理解している」と述べて、米政府の立場に配慮している。

 被爆地の苦しみに背を向け、ないがしろにするものだ。被爆国の責任を果たしていない。

 2日にINF廃棄条約が失効して、米ロに残された核軍縮の枠組みは21年2月に期限が切れる新戦略兵器削減条約(新START)のみだ。延長協議に進展の兆しは見えず、今後は不透明だ。もし失効すれば二大核保有国の軍拡競争を抑制する法的手段はなくなる。

 国際間の緊張が高まっているいま、日本の役割は大きい。首相は広島と長崎の式典で「核兵器(保有)国と非核兵器国の橋渡しに努める」とし、「国際社会の取り組みを主導する」と述べている。

 現状では空疎な言葉にしか聞こえない。決意が本物なら、被爆地の訴えに真摯(しんし)に向き合った上で、具体的な核廃絶に向けた取り組みを示すべきだ。米国に追従するばかりで地に落ちた被爆国の信用を取り戻すため、まずは核禁止条約を批准することが必要である。

(8月10日)

最近の社説