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原発の処理水 信頼回復が進まなければ

 東京電力福島第1原発で増え続ける放射性物質を含んだ処理水の保管が、あと3年ほどで限界に達するとの試算を東電が示した。

 処理水の入ったタンクで敷地が埋まれば、廃炉作業に影響が出かねない状況という。

 原子力規制委は希釈して海洋放出することを求めている。一方、地元の漁業関係者らは風評被害を心配し、強く反対している。

 政府は小委員会を設け、地層注入や蒸発など処分方法を検討してきた。海洋放出が有力視されているが、方針は決まっていない。

 東電には、保管の限界時期を示すことで早期の方法決定を促す狙いがあるのだろう。

 切羽詰まった状況なら海洋放出を押し通せる、といった考えはないか。地域を軽視してはならない。事故後住民は展望が描けない状態に置かれてきた。事故対応でも十分な情報がもたらされず、政府や東電への不信感が募った。

 政府と東電には、対話を積み重ねていく姿勢が求められる。

 第1原発では、事故で溶け落ちた核燃料が残る1〜3号機に注ぐ冷却水と地下水の流れ込みなどで、汚染された水がいまも発生している。装置で浄化処理しているが、トリチウムという放射性物質だけは除去できない。

 トリチウムは人体への影響が比較的小さいとされ、他の原発では希釈して海に放出している。

 保管中の処理水は7月末時点で110万トン。敷地内に確保できるタンク容量は137万トンで、2022年夏ごろに容量を超える。

 事故で操業中止に追い込まれた福島県の沿岸漁業は、海域と魚種を絞りながら試験操業を徐々に拡大してきたところだ。海洋放出されたら新たな風評被害を生むと危ぶむのは、当然の心情だ。

 昨年、保管されている処理水の一部にトリチウム以外の放射性物質が残っていることが発覚した。政府や東電には、問題を指摘されるまで住民に説明する姿勢が見られなかった。情報隠しと受け取られても仕方ない対応だった。

 東電は先日、福島第2原発の廃炉方針をようやく表明した。福島県が8年前の第1原発事故直後から繰り返し訴えたのに、決断をずるずると先延ばししてきた。

 第1原発の周辺では、最終的な行き場も決まらぬまま汚染物質の中間貯蔵施設の建設が続く。

 不信の底流には、ごまかしを重ねる原発政策への疑念があるのではないか。東電を前面に立たせるだけではなく、政府が前に出て信頼を回復しなければならない。

(8月12日)

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