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防犯カメラ設置 人権に目を向けた論議を

 県市長会が、防犯カメラを街頭などに設置する自治体に財政支援をするよう国に求めると決めた。県市長会として助成を国に要望するのは初めてだ。

 防犯カメラは犯罪捜査に力を発揮する一方、本人の同意なく私人の行動を記録できる。プライバシーとの兼ね合いが長く議論されてきた。現状、記録の扱いについて統一されたルールもない。

 各市長は要望を機に、人権に絡むデリケートな問題を含んでいることを改めて認識してほしい。

 要望は佐久市が提案し、総会で採択された。「数が多くなればなるほど効果が増大していく」「社会的な要望が一般的となる中、効果を高めるべく街頭等への設置を行うにあたり、市町村の財政負担は過大となることが見込まれ、導入に踏み切れずにいる」とした。

 通学路への設置は国が2018年度から事業費の2分の1を特別交付税で支援している。県内では6市村が計1千万円余の交付を受けた。今回の要望は、市町村が街頭などに単独で設置する際に財政支援がない、と訴えている。

 防犯カメラは設置場所や運用によって人権を脅かす存在にもなる。松本市では生活保護課窓口への設置を巡り、市民から「生活保護申請を萎縮させる」との強い反発が出た。

 街頭を歩く人々も、そこにいる理由や事情はさまざまだ。映像に記録されたくない人もいる。要望では設置について「社会的な要望が一般的となる」としているが、住民の誰もが賛同しているわけではない。行政は懸念の声にも耳を傾ける必要がある。

 総会では、市長たちからほとんど意見が出なかった。総会後の取材に、自治体の直接設置ではなく地域が設置する場合の補助を求めたもの―と受け止めている市長もいた。前提となる認識がばらばらなまま、全会一致で要望を決めた対応は軽すぎないか。

 「事件の解決や犯罪抑止に不可欠だ」「自分にやましいところがないので気にならない」との声も多い。ただ、行政が設置したカメラであっても、誤った運用を防ぐためのチェックは必要だ。佐久市の柳田清二市長も取材に、設置場所や運用ルールの公開が必要だとの認識を示している。

 防犯カメラに限らず、個人情報の収集や監視の強化が人権を脅かす危険は常に警戒したい。地域社会のあり方にかかわる自治の問題でもある。設置の是非は、住民や議会がきちんと関与しながら丁寧に論議をするべきだ。

(8月24日)

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