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GSOMIA破棄 報復の応酬をまず止めよ

 関係の溝が一段と深まった。

 韓国が軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決め、日本政府に通告した。

 安倍晋三政権が、安全保障上の懸念が生じたとして対韓輸出規制を強化したことを理由に挙げた。韓国を友好国と見なさない国との協定は「国益にそぐわない」としている。

 韓国との情報共有の道が断たれたわけではない。信頼の土台が崩れ続ける現況の方が深刻だ。

 協定は、国や機関同士が提供し合う軍事機密情報の漏えい防止を目的とする。日韓は、朴槿恵(パククネ)前政権時の2016年11月、北朝鮮による核・ミサイル開発の進行を背景に締結していた。

 韓国では、植民地支配を受けた日本との軍事協定に反対する世論も根強い。文在寅(ムンジェイン)政権は、過去の保守政権が敷いた路線の修正を国政運営の柱に据えてもいる。

 協定破棄に日本政府からは「驚いた」「意外だ」との声が上がっている。本心だとすれば、情勢分析の甘さは否めない。

 文大統領が15日の「光復節」の演説で対話と協力を呼びかけたのに、日本から反応がなかったことも響いたとみられる。

 北朝鮮だけでなく、ロシアや中国との対抗上、日米韓の連携が不可欠な米政権にとっても痛手になる。米国防総省は文政権を名指しし「強い懸念と失望を表明する」との異例の声明を出した。

 日本にとっては韓国から脱北者の情報が入らなくなり、拉致問題対応に影響する恐れがある。

 元徴用工訴訟に端を発した対立は、日本が経済に持ち込み、韓国が安保へと広げた。日韓を結ぶ航空便は縮小し、韓国からの訪日客も減少に転じた。自治体や民間の交流事業中止が相次ぐ。

 韓国では反日デモ、日本製品の不買運動が続く。日本では「嫌韓」感情が在日韓国人にまで向けられ始めている。日韓両政府は国民に自制を呼びかけるが、あおってきたのは当の政府だろう。

 ここは、米国が提案したように双方が新たな措置を取らないよう約束する「据え置き協定」に合意すべきだ。大臣や高官が顔を合わせても主張の応酬に終わるなら、冷却期間を置く方がいい。その上で、対立の根となった徴用工問題の解決策を探りたい。

 1965年の日韓請求権協定で徴用工問題は解決済みだ―との主張に、日本が固執するのは現実的でない。積み残したままの戦後補償で果たさなくてはならない責任は、まだまだあるはずだ。

(8月24日)

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