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笑いとは、すぐれて人間的なもの―。臨床心理学者の故・河合隼雄さんの論考に触れて、胸に落ちた。笑う者と笑われる者を分離している心の働きは、人間特有なのだという。確かにわが家の猫はテレビのお笑い番組に見向きもしない

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分離に必要なのは、他者を自己と分けて見る「対象化」の力だ。それには心の余裕も必要で、緊張したり、熱中したりして自己が状況と「一体化」すると笑えない。逆に、笑うことでストレスを緩和することもできるようだ。笑いは健康に役立っている

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無意識に出る笑いとは別に、意識でコントロールされた表現としての笑いもある。好意を示すため、敵意を生じさせないための笑い。そして攻撃するための笑い。みんなで1人を笑いものにするのは、明確な「排除の表現」だと河合さんは指摘する。笑う側は一体感も感じている

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この場合は当然、敵対関係となる。それなのに、テレビ番組で周囲から一方的に「いじられる」お笑い芸人は敵対どころか、一緒に笑みさえ浮かべている。「いじり」に本気で怒り出すことはない。これはエンターテインメント。計算された笑いなのだ

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それでも、こんな笑いをずっと消費していて大丈夫かと心配になる。子どものころ、テレビ番組のギャグをまねて大人たちをあきれさせた。今のテレビの笑いを教室でまねると、どうなるだろう。残酷な笑いに反撃の怒りも許されない。「芸人」にされた子のあいまいな笑みは見たくない。

(8月25日)

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