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軽減税率導入 県内の年配自営業者に廃業の動き

「藤本商店」の営業最終日、常連客と笑顔で話す藤本敏子さん(中央)。消費税率引き上げや軽減税率の導入が、廃業の「引き金」になった=8月31日、下諏訪町「藤本商店」の営業最終日、常連客と笑顔で話す藤本敏子さん(中央)。消費税率引き上げや軽減税率の導入が、廃業の「引き金」になった=8月31日、下諏訪町
 10月の消費税率の引き上げや食料品などの税率を8%に据え置く「軽減税率」の導入への対応の負担を「引き金」に、年配の自営業者が廃業する動きが県内で出ている。高齢化や後継者不在などで事業を続けられるか不安を持っていた業者にとって、経理の複雑化や対応するレジの購入などが重くのしかかった形だ。

 「もう年だし、冷蔵庫も調子が悪い。(7月の)参院選後に増税が中止されることを期待したんだけどね」。諏訪郡下諏訪町で8月31日、この日で閉店を決めた食料品店「藤本商店」の経営者、藤本政一さん(81)が、閉店理由を尋ねる常連客に答えた。

 店は戦後ずっと続いてきた。藤本さんの妻、敏子さん(78)が市場で選び、さばいた鮮魚が好評だった。しかし、毎朝午前6時に市場まで車を運転し、仕入れた何十キロもの野菜や魚を運ぶ生活は骨身にこたえていた。

 そこに決まった消費税率の引き上げと軽減税率の導入。藤本さんは6月、増税前後の経理区分などに関する説明会に出席した。地方消費税率の変更や、細かい区分の請求書が必要になる2023年からの「インボイス(税額票)制度」で消費税の申告が複雑になりそうだと思ったが、詳細は理解できなかった。「誰かに『継いで』とも言えないし、あと何年生きられるかも分からない」

 南佐久郡佐久穂町のラーメン店「味千(あじせん)ラーメン佐久町店」は、8月22日でのれんを下ろした。店を営んできた油井親子(ちかこ)さん(65)の手作りギョーザが人気で、持ち帰り客も多く、丼を持っていけばラーメンも持ち帰れた。

 5年前に夫が先立ち、義母の介護も負担が増したが、常連客もいることから続けてきた。しかし、10月以降も続ければ、店内で飲食する客には税率10%、持ち帰る客には8%と税率が変わる。メニュー表の値段の書き換えが必要で、経理も複雑化する。

 レジは14年に税率が8%に引き上げられた直後に買ったが、軽減税率には対応できず「まさかこんな対応が必要になるとは」。冷蔵庫のリース代の支払いが残っているが、閉店を決めた。

 長野、松本の商工会議所によると、消費税率の引き上げなどへの対応を主な理由とした会員事業所の閉業はないとしている。

 ただ、下諏訪商議所(下諏訪町)職員の清水芳樹さん(42)は、下諏訪町内では藤本商店以外に同様の理由で廃業した食堂が少なくとも1店あるほか、3、4店は「対応できないし面倒」と嘆いているという。

 営業を続ける店も思いは複雑だ。長野市で夫と喫茶店「山と渓谷」を営む青沼伸枝さん(75)は、税率10%に対応したレジを売り込む販売員が来店した際、「どうして増税のためにレジを買い替えないといけないのか」と思った。夫婦とも年を取ってきた上、レジを新調しても自分たちが何年使えるか分からないだけに、「レジを替えるか、店を畳むか、と頭をよぎった」と話した。

(9月10日)

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