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「大唐西域記」は三蔵法師で知られる中国唐代の僧玄奘(げんじょう)が残した旅行記だ。インドから経典を持ち帰った旅の見聞を記した。文中に仏教国「ブリジスターナ」の記述がある。人々の性格は激しく、深く仏教を信仰し、学を尚(たっと)び…と

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近年の調査でアフガニスタン中部の遺跡から経典写本が見つかりブリジスターナだった可能性が高まった。西域記にはバーミヤンの大仏も記されている。玄奘も敬う仏教文化が花開いていた。それから長いときを経てアフガンは暴力と貧困の渦中にある

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バーミヤンの大仏は2001年、タリバンが爆破した。同年9月11日の米中枢同時テロを機に米国はアフガンを攻撃しタリバン政権を打倒する。だがパンドラの箱が開いたようにテロが頻発し混乱が収まらない。米国とタリバンの和平協議は暗闇に見る一筋の明かりだったはずだ

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「大筋合意」のはずが一転「中止」をトランプ大統領が表明した。テロを続けるタリバンに問題があるにしても、和解に引き込まないまま駐留米軍の削減に踏み切れば、民にさらに犠牲を強いることになる。大統領選への打算で和平への道を閉ざすのか

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79年の旧ソ連による侵攻から40年。紛争は常に外から持ち込まれた。そんなアフガンの苦悩に私たちは目を向けず争いを手助けしたのではないか。<知らずしてわれも撃ちしや春闌(た)くるバーミアンの野にみ仏在(ま)さず>。大仏爆破を知り上皇后美智子さまが詠まれた一首だ。重い問いである。

(9月11日)

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