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再編病院名公表 撤回ないと前に進まない

 あまりに乱暴ではないか。全国で批判が高まるのは当然だ。

 厚生労働省が、再編や統合が必要と判断した公的病院名を公表した。全国424病院、県内は分院を含めて15病院に上る。2017年度の診療実績や、「車で20分以内」に競合病院があるかを判断基準にした。

 発表は唐突で、判断基準は地方の事情を全く考慮に入れていない。16項目を分析した診療実績も、救急車受け入れ件数以外は6月だけが対象だ。医療関係者は「納得できない」「狙い撃ちされた」と不信を募らせ、住民には病院がなくなるとの不安を広げた。責任は厚労省にある。

 厚労省が病院の再編・統合を急ぐのは、団塊世代全員が75歳以上となる25年に医療費の急増が確実だからだ。分散している医療機能を集約し、病院ベッド数を減らして不必要な入院や長期医療を見直し、医療費抑制につなげる。全国で124万6千床(18年)ある病院のベッド数を119万1千床まで減らす目標を掲げ、地方に議論を促している。

 これに応じて、各都道府県は、「地域医療構想」を策定。長野県も、25年に必要となる病床数を15年時点より1680床少ない1万6839床と推計した。ただし、医療関係者から「地域の実情に合っていない」と声が上がり、県の病床削減目標ではなく参考値であることを明記している。

 地域医療構想を踏まえて、県内では2次医療圏ごとに病床数や医療機関の役割見直しの検討が始まっている。一方的な病院名の公表は、こうした地方の側の積み重ねを崩しかねない。

 地方の病院は、地域住民が安心して暮らしていくための拠点だ。病気の治療や健康づくりだけではなく、地域の雇用を支えていたり、街づくりの核として活用されたりしている。過疎化する地域を支えている病院もある。実情を無視して再編が進めば、地方の崩壊につながりかねず、国が掲げる地方創生には逆行する。

 総務省が間に入って4日に急きょ開かれた地方3団体との協議の場で、平井伸治鳥取県知事は、地域に混乱を招いていると指摘し、「本当ならリストを返上してもらいたい」と訴えた。国側は反省の弁ととともに、病院名公表の経緯や目的について各地で説明する考えを示している。

 解決への糸口は見えていない。地方と協議を続けるなら、公表の撤回が必要だ。不信や不安の中で、議論は前に進まない。

(10月8日)

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