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即位の儀式 踏襲は政府の責任放棄

 天皇陛下の皇位継承を内外に示す中心的儀式「即位礼正殿の儀」が、執り行われた。

 陛下は玉座の「高御(たかみ)座(くら)」に立ち、「国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、象徴としての務めを果たす」と即位を宣言された。

 上皇さまは象徴として求められる役割を模索し、国民とともにある天皇像を示されてきた。「平成流」とも称される。

 陛下は新たな時代の象徴としてどんな役割を担うのか。国民一人一人が見守っていきたい。

 政府の対応には問題が残った。「正殿の儀」などは前回に引き続いて国事行為として行われた。議論を深めることなく、様式もほぼ前回を踏襲している。

 儀式には、憲法に反するという指摘が根強い。まず政教分離だ。高御座は天孫降臨神話に由来する。皇室の祖神とされる天照大神(あまてらすおおみかみ)が授けたと神話で伝わる「三種の神器」の剣と璽(じ)(勾玉(まがたま))も高御座に安置した。天皇に神話的な権威を与えかねない。

 明治以降、国家と結び付いた国家神道で天皇を神として崇拝し、天皇が治める国家への忠誠を国民に強いた。その結果、戦争で多くの国民の命が失われた。

 現憲法は国などに宗教的活動を禁止し、天皇の地位を「日本国民の総意に基く」と規定した。儀式は憲法の規定や精神に合わない。

 次に国民主権の問題だ。陛下は約1メートルの壇上から、安倍晋三首相を見下ろす形で、万歳三唱を受けた。主権は国民にある。位置関係は憲法にそぐわない。

 平成への代替わりでは、政府が首相の立ち位置を中庭から床上に変え、服装も衣冠束帯から、えんび服に変更し宗教色を薄めた。

 それでも大阪高裁は1995年の違憲訴訟の判決で、請求は退けたものの、政教分離規定違反との疑いを否定できないと指摘。首相の立ち位置も「憲法にふさわしくないと思われる」と言及した。

 儀式の骨格は、明治期の1909年に儀式の細目を定めた登極令(とうきょくれい)に基づく。現在に合っているのか検証するのが当然だ。

 上皇さまの退位に伴う今回の皇位継承は、議論の時間が十分にあった。政府は儀式を円滑に進める名目で議論を実質的に避けた。皇位継承問題に議論が広がり、自民党内や保守派に異論が根強い女性・女系天皇の問題が対象になることを懸念したのではないか。

 上皇さまが行動で示されたように、皇室の在り方は時代とともに変わっていく。前例踏襲した政府の対応は責任放棄である。

(10月23日)

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