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上田電鉄別所線 全線復旧「1年で」 国・市と調整組織

千曲川左岸側で崩落した別所線の鉄橋。ショベルカーによる堤防の緊急復旧工事が行われている=27日午後1時34分、上田市千曲川左岸側で崩落した別所線の鉄橋。ショベルカーによる堤防の緊急復旧工事が行われている=27日午後1時34分、上田市
 上田電鉄(上田市)が、台風19号で被災した別所線(上田―別所温泉、11・6キロ)について1年後をめどに全線復旧を目指していることが27日、分かった。千曲川の増水で鉄橋が部分的に崩落。同社は一部区間で代行バスを走らせ列車運行を再開する一方、全線復旧に向け国土交通省と上田市、同社による調整組織も発足した。別所線は一時廃線の危機にあったものの、近年は上田の観光やイベントとの連携も活発化し、地方私鉄の中でも存在感を増していた。市民や鉄道ファンらも支援に動きだしている。

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 別所線鉄橋周辺では27日も、千曲川左岸堤防の緊急復旧工事が続いた。トラックが運んできた土をショベルカーが整えていく。約200メートル下流に架かる県道上田橋を渡る市民や観光客らが足を止め、崩落した鉄橋を見ていた。

 崩落現場を撮影していた大学院生の谷本涼さん(26)=大阪府=は「やるせない気持ち。復旧したらまた乗りに来たい」。交通を中心に都市計画を研究し、別所線にはこれまで5、6回乗ったことがあるという。

 左岸の堤防と共に橋台が崩れ、鉄橋が落ちたのは13日午前8時ごろ。上田電鉄は15日から、鉄橋を含む上田―下之郷間は代行バスを走らせ、下之郷―別所温泉間は鉄路による運行を再開した。

 上田と別所温泉を結ぶのは上下18本で、被災前に比べ半数近くに減便。所要時間は20分程度長くなり、下之郷駅での乗り換え時間を含めるとダイヤ上は50分余から70分余かかる。しなの鉄道が上田―田中(東御市)を運休している影響もあり、上田橋などの周辺道路も朝夕は交通量が増し、従来よりも混雑している。

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 国土交通省北陸地方整備局は現在も速い水流が続く中、堤防緊急復旧を24時間態勢で進めている。完了後、上田電鉄は鉄橋の損傷具合を調べ、利用可能部分を判断する。鉄橋の復旧を安全に行えるのは、冬季の渇水期を中心に来年の梅雨入りまでの約半年間に限られる。北村健太郎常務取締役管理部長は「状況は見えにくいが、1年後には鉄橋を復旧させることを目指して進めたい」と意気込む。

 国や上田市は全線復旧に向けた支援に前向きだ。

 国交省北陸信越運輸局鉄道部は、関係機関の情報共有を進め復旧の速度を上げる狙いで上田電鉄や北陸地方整備局河川部、上田市を交えた連絡調整会議を設置した。

 上田電鉄にとっては億単位に上るとみられる復旧費用の確保も大きな課題となる。

 政府は東日本大震災(11年)、熊本地震(16年)で、鉄道事業者への補助率をかさ上げする支援策を打ち出し、復旧費用をほぼ国費で賄った。今回の台風19号も激甚災害に指定する方針だ。

 赤羽一嘉国交相は25日の閣議後会見で、上田電鉄などを念頭に「経営状況が脆弱(ぜいじゃく)な鉄道会社への支援は大きな課題の一つ」とした上で「橋が流された場合は物理的に復旧・復興に時間がかかる。しっかり受け止めて(支援を)検討する」と述べた。20日には同省の水嶋智鉄道局長が別所線の現場を視察している。

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 さらに早期復旧を後押ししているのが、地元市民や鉄道ファンだ。住民団体「別所線の将来を考える会」(上田市)は復旧に向けた署名活動や、インターネット上で資金を募るクラウドファンディングの検討を進めている。

 別所温泉旅館組合は20日、別所線応援の募金や署名を募るイベントを別所温泉駅で開催。倉沢晴之介組合長は「急に開いたのに、多くの市民が駆け付けてくれた」。535人分の署名と募金22万円を28日に上田電鉄に届ける。

 ネット上でもツイッターなどに「がんばれ別所線」といった書き込みが相次ぐ。上田市の土屋陽一市長は「市民や観光客に愛される重要な路線。なくすことはできない」と積極支援に前向きな姿勢を示している。

(古志野拓史、井手拓朗、芦田雄樹)

(10月28日)

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