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障害年金 制度の不透明さがまた

 病気やけがで障害を負った人に支給される障害年金をめぐって、不透明な制度運用の実態がまた明らかになった。診断が確定するまでの期間、場合によっては何年分も支給を受けられない事例が相次いでいる。

 障害年金は「初診日」を起点として支給される。従来は文字通り初めて医療機関を受診した日を基準とし、さかのぼって支給されてきた。ところが、ここ2、3年、診断確定前の支給を認めない傾向が目に見えて強まったという。

 慢性疲労症候群(CFS)や脳脊髄液減少症といった病気は、専門医が少なく、確定診断までに数年を要することが多い。初診日の基準が後ろにずれると、年金が数百万円減る場合もある。生活苦を余儀なくされる当事者にとって切実な問題である。

 CFSは、原因不明の激しい疲労や体調不良が続く。宇都宮の女性は2012年から通院し、医療機関を何度も変えて16年にようやく診断が確定した。12年を初診日として年金を申請したが退けられ、国に不支給処分の取り消しを求める裁判を起こしている。

 受給できる期間が短くなるだけではない。障害年金は初診日に加入していた保険制度によって基礎年金と厚生年金に分かれ、支給額に差がある。最初に受診したときは勤めていても、症状が悪化して診断確定時に退職していると、基礎年金しか受け取れなくなる。

 審査にあたる日本年金機構は初診日の認定に関して「個々の事例に応じて総合的に判断している」と説明するにとどまる。当事者に多大な不利益を及ぼす処分について、明確な理由を示さずに基準を変えるのは不当だ。

 障害年金についてはこれまでにも、不支給と判定される割合に大きな地域差があることなど、制度運用のずさんさが繰り返し指摘されてきた。審査体制を一元化したのをはじめ、政府はその都度、是正策を講じてはきたものの、場当たりの感が否めない。

 初診日に限らず、認定の基準は不明確で、障害の状態が変わらないのに、更新手続きの際の判定で等級が下がり、支給額を減らされる人が少なくない。一方的な打ち切りにもつながっている。

 障害を負った人の生活を支える制度本来の趣旨に沿った運用がなされているとは言いがたい。困窮して治療に支障を来せば、命にかかわる患者もいる。障害年金は生存権を保障する仕組みだ。そのことを踏まえて、運用のあり方を根本から見直す必要がある。

(11月7日)

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