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レオナルド・ダビンチは膨大な研究ノートを残した。後に「レスター手稿」と呼ばれるノートには地質、天文、水を巡る多くの考察が72ページにわたり記されている。その一つがなぜ貝殻の化石が海から離れた高地で見つかるのか、である

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16世紀初めにかけてのこと。人々は旧約聖書にある大洪水によって海から運ばれたと信じていた。疑問を抱いたダビンチは高地を歩いて観察し自分の目で化石が幾層もの地層から出ていることを確認。1回の洪水で運ばれたことなどありえないと考えた

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そのうえで類推している。太古は海底だったところが地殻の変動で隆起して山ができた、と。「神への冒涜(ぼうとく)」との非難を恐れず事実を根拠に導いた結論は正しかった。ウォルター・アイザックソン著「レオナルド・ダ・ヴィンチ」がノートを基に描き出している科学者の顔である

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温暖化の科学的な知見を「フェイク」と決め付ける。そんなトランプ米大統領を「化石」と表現しては失礼だろうか。国際NPOが温暖化に背を向ける米政府に「特別化石賞」を贈っているから的外れではあるまい。ついに「パリ協定」離脱を通告した

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地中に埋もれた太古の動植物の残骸が長い時を経て変化したのが石炭などの化石燃料だ。燃やせば二酸化炭素(CO2)を排出する。石炭火力にこだわって輸出を進める日本も「化石賞」の常連である。洪水説を「愚かで浅はか」と厳しく戒めたダビンチから見れば同じ穴のむじなだろうか。

(11月7日)

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