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劣悪な住環境浮かぶ 松本のサ高住虐待問題 利用者家族証言

 松本市にある「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)で、過度な身体拘束など施設ぐるみの入居者虐待が行われていた問題で、入居経験のある男性2人の家族が24日までに、信濃毎日新聞の取材に応じた。劣悪な住環境について証言しつつも、「つぶれたら困る人が出る」などと吐露。在宅生活の難しさや高齢者施設の少なさなどで施設を頼らざるを得ない利用者側の立場の弱さが浮かぶ。

 経営する株式会社のパンフレットなどによると、この施設は2階建て約20部屋で有料老人ホームの要件も満たしているが、元職員らによると、定員約20人の1・5倍のお年寄りを受け入れていたという。

 脳腫瘍で半身まひになり、今年1月から約9カ月間入居していた松本市内の60代男性の義姉は、施設見学の際、職員数の少なさに驚いた。食事は皿1枚におかゆとおかず2品。男性から毎日「腹が減った。死にそう」と携帯電話で連絡があったという。ベッドは常に四方を柵で囲み、「おむつをいじるから」とミトン型手袋を付けさせられた。入居に際して、義姉は「身体拘束」を承諾する書類に署名させられたというが、「仕方ないと思った」と話す。

 本来は1世帯1部屋のはずだったが、男性は面識のない他の男性と相部屋で、3、4回部屋も変わった。義姉に「いつもシャワーだけで一度も湯船に漬かれなかった」とも話したという。

 家族で話し合い、10月に男性は市内の別法人の施設に移った。だが、そこを見つけるまで2カ月かかったといい、義姉は「施設がつぶれたら行き場のない入居者もいるはず」と話す。

 昨年7月から入居していた塩尻市の男性(82)は今年5月、上田市内の有料老人ホームで亡くなった。元職員らによると、問題の施設を経営する株式会社の社長が代表を務める一般社団法人の施設だ。男性が同市に移されていたことを家族は死後に知った。

 男性は名古屋市で暮らしていたが2017年、出身地で兄夫婦もいる塩尻市に転居。認知症の徘徊(はいかい)が始まり、市内の施設に3、4カ月入所した後、最期まで居られる―と松本市の施設に入った。男性が亡くなったら施設が火葬する契約だったという。

 施設側から転居の連絡はなく、遺灰を届けに来た職員が「救急車で運ばれ、誤嚥(ごえん)性肺炎で亡くなった」と言う以上の説明もいまだにないといい、兄は「今更騒ぐつもりはない。でも釈然としない」と話した。

 この施設を巡っては、松本市が入居者7人への「不適切な身体拘束」を確認し、改善を指導。10月17日付で「虐待が認められた」と県に報告していた。信濃毎日新聞は8月以降、取材を申し込んでいるが、施設側は応じていない。

(12月25日)

長野県のニュース(12月25日)