長野県のニュース

台湾総統選挙 噴き出した中国への不信

 香港市民の訴えを力で屈服させようとしている中国への反発が、台湾の選挙結果にそのまま反映された。

 台湾総統選は台湾独立志向の与党、民主進歩党(民進党)の蔡英文総統が親中路線の国民党・韓国瑜氏らを大差で破り、再選された。総統選史上最多の得票で圧勝した。

 台湾は直接総統選挙の導入で政権交代を重ね、民主政治が定着。世代交代もあり、市民は「台湾人」の自意識を強めている。本土と台湾は不可分とする中国の「原則」を突っぱね続けた蔡氏を、有権者は強く支持した。

 蔡氏は内政改革への反発などから支持率の低迷にあえいでいた。一昨年の統一地方選大敗で党首辞任にまで追い込まれた。

 逆転のきっかけを作ったのは中国の習近平国家主席だ。今年1月、国民党が優勢とみて「一国二制度」による統一と政治交渉を呼び掛けた。蔡氏は即座に拒否。主権国家同士の対等な関係でない協議に応じない考えを示した。

 風向きを一変させたのが6月から激化した香港情勢だった。普通選挙実現などに拡大する市民の要求を行政府は力で押さえ付けた。中国の意向が働いている。

 「香港の今日は台湾の明日」。台湾市民が中国への反発や警戒を強めるのに比例して、蔡氏の支持率はV字回復していった。

 中国は経済支援をちらつかせて国民党を後押しする一方、中国から台湾への個人旅行停止といった「アメとムチ」で揺さぶった。台湾と外交関係がある国にも経済的影響力を背景に断交を迫って、台湾の孤立化を進めた。

 一方、中国との対決姿勢を強める米トランプ政権は異例の対応で蔡政権を厚遇。約27年ぶりに戦闘機の売却も再開させ、肩入れした。米中の「代理戦争」の様相も呈した選挙で民進党は風に乗り、立法委員(国会議員)選挙でも過半数を確保した。

 とはいえ、米国の対中強硬路線がいつまで続くかは分からない。中国はさらに締め付けを強めるだろう。米中貿易摩擦の長期化で台湾企業は中国への投資を控え、拠点回帰の動きもあるが、産業の「脱中国依存」は簡単でない。

 中国にとっては昨年11月の香港区議会選挙に続く「連敗」だ。「一国」を押しつけるほど、強い反発となってはね返ってくる。

 「二制度」が名ばかりと見抜かれているからだ。経済力や軍事力を振りかざしてばかりでは、自由や民主主義に価値を置く民心の支持は得られない。

(1月13日)

最近の社説