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米中貿易合意 当座しのぎにすぎない

 それぞれの内向きな事情から当面の利害で一致しただけ、というのが実情だろう。

 米中両国が貿易協議で第1段階の合意に達した。2018年から本格化した貿易摩擦が、ひとまず休戦状態に入った形である。

 中国が農産物など米国産品を大量購入する代わりに、米国が発動済みの制裁関税の税率を一部引き下げることになった。

 互いの製品に高率の関税をかけ合う関税合戦に一定の歯止めがかかったことは歓迎したい。

 一方、両国とも近視眼的な対応が目立ち、貿易に関する構造的な課題の多くは先送りされた。

 今回の合意は、大統領選に向けて有権者に輸出拡大を分かりやすくアピールしたい米トランプ政権と、摩擦の激化による自国経済の失速を懸念する中国政府の思惑が重なって実現した。

 第2段階以降の協議の具体的な展望はなく、対立が収束に向かう見通しは立っていない。

 世界1位と2位の経済大国である米中の対立は、世界経済の大きな不安定要因になっている。両国は、不毛な対立を解消し、公正な通商環境の構築を目指す責任を自覚しなければならない。

 関税合戦を仕掛けたのは米政権である。対中貿易の不均衡是正を理由としたが、根底には、中国の経済が抱える不公正な通商環境に対する不満があった。

 中国は01年に世界貿易機関(WTO)に加盟し、貿易によって急速に経済成長した。半面、巨額の産業補助金を通じた国内企業優遇や外国企業に対する技術移転の強要といった問題が指摘され、国際的な批判を受けている。

 国家資本主義と呼ばれる中国独自の経済政策で、共産党主導の体制とも結び付く。基本的な姿勢は手放さないだろう。

 米中合意には技術移転強要の是正が盛り込まれたが、産業補助金の問題は先送りした。移転強要についても検証は難しく、実効性に疑問符が付く。構造改革を促すものとは程遠い内容になった。

 米政権は、自国の強大な購買力を背景に、制裁関税を振りかざして貿易相手国に圧力をかける手法を改める気配がない。

 本来なら、不公正な通商環境はWTOなどを通じて多国間で協議すべきだ。そのWTOは米国の妨害で機能不全に陥っている。

 通商問題が大国間の政治的取引に委ねられる限り世界経済の不安定化は避けがたい。日本を含む各国は、多国間によるルールづくりの努力を忘れてはならない。

(1月17日)

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