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IR基本方針 整備を既定路線にできぬ

 ほとぼりを冷ます、ということか。

 政府がカジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)を巡り、整備地域の選定基準を盛った基本方針の決定を先送りする。IR汚職事件を受け、反対の声が高まる世論の動向を見極めるという。

 野党4党は20日、IRの推進法と整備法を廃止する法案を提出した。いずれもおざなりな国会審議で成立した法律だ。カジノは本当に必要なのか。この際、一から議論し直すべきだ。

 IRは、カジノや首脳級会合も開ける国際会議場、劇場、客室の広いホテルを一体的に整備する大型の集客施設を指す。政府は2020年代半ばに国内3カ所で開業する方針で「観光立国を目指す上で不可欠」と繰り返す。

 汚職事件では、IR担当の内閣府副大臣だった衆院議員秋元司容疑者が収賄罪で逮捕、起訴されている。贈賄容疑の中国企業は、ほかにも5人の衆院議員に現金を渡したと供述している。

 計画を推進するのが国なら、規制するのも国だ。カジノの営業規制を示した整備法には、詳細を後で定めるとした曖昧な規定が目立った。参入をうかがう企業が有力議員に近づき、工作を図ったとしても不思議でない。

 安倍晋三政権はIRの基本方針に、事業者と政務三役らが接触する際のルールを追加する構えでいる。政府からは汚職事件で「IRの制度自体がゆがめられたわけではない」との声も上がる。

 胸を張って正当性を主張できる計画だろうか。ギャンブル依存症の増加、治安悪化、子どもたちへの影響、資金洗浄の恐れといった懸念を拭えない中、与党は法案採決を強行してきた。

 今月の共同通信の世論調査では7割余がIR整備を「見直すべきだ」と答えている。汚職事件で反対が急増したのではない。当初から拙速な審議を危ぶむ傾向は強かった。ここにきて北海道や千葉市がIR誘致から撤退し、自治体の熱も下火になりつつある。

 そもそも〓博(とばく)場による観光振興を成長戦略と言えるのか。安倍政権は主な客層に訪日外国人を想定し、各地に観光誘導すると説明する。実際は客層の7〜8割を日本人が占めるとの推計もある。アジアで後発となるIRの経営が行き詰まれば、地域経済が重荷を抱えることになりかねない。

 懸案が多く、既定路線として進めることは認められない。野党の廃止法案を審議日程に乗せ、議論を煮詰めなければならない。

(1月22日)

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