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武漢封鎖 人権を侵していないか

 中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、中国当局が同市や隣接の黄岡市を事実上封鎖する対応に乗り出している。

 人口1千万人を超える大都市の列車や航空便を停止し出入りを遮断する異例の措置だ。

 感染による肺炎患者の多くが武漢と関わりがあることを考えれば、一定の効果は期待できるだろう。ただ個人の移動の自由を奪う強権発動でもある。

 武漢には旅行者も含めて約710人の日本人がいる。封鎖がいつまで続くのか、その間の物資は十分か、治療態勢は大丈夫か。心配は尽きない。

 公衆衛生を理由に人権が著しく侵されないか見守る必要がある。

 武漢市当局の初動は、事なかれ的な対応が目立った。

 原因不明の肺炎患者が確認されたのは昨年12月初旬だ。インターネット上に相次いだ患者続出の声を黙殺し、告発者を拘束する。人から人の感染は確認されないと、軽視する姿勢を続けた。

 事態が変わったのは、習近平国家主席が感染拡大阻止を指示した今月20日からだ。1カ月余りにわたって放置したといえる。

 以降は、肺炎患者数が連日100人単位で増え、感染地域も中国全土に広がった。武漢以外での死者も確認されている。

 中国には苦い経験がある。2002年11月に重症急性呼吸器症候群(SARS)患者が見つかっていながら公表せず、感染が拡大し世界から非難を浴びた。

 今回も初動のミスが事態の深刻化を招いている。国際社会の批判をかわすために、習指導部が都市封鎖という極端な対応に向かわせたとも考えられる。

 世界保健機関(WHO)は、緊急委員会を2日続けて開き、緊急事態宣言を当面見送ると決めた。中国国外での感染例が限定的で、発症者の大半は軽い症状で済んでいる点が主な理由だ。

 一方で、研究者らからは、発症者数は報告より多い、感染拡大の規模はSARSの10倍、との見解も出ている。感染源や感染経路はいまだに分かっていない。

 中国当局には、感染実態が的確に把握できるよう、引き続き速やかな情報提供を求めたい。

 中国では春節(旧正月)の大型連休が始まった。延べ約30億人が国内外を移動すると見込まれ、日本にも大勢の旅行者が来る。

 手洗いやうがいを怠らぬよう、自ら心掛けるとともに、中国からの来日客にも呼び掛けたい。

(1月25日)

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