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著作権料の徴収 文化の振興に資するのか

 楽曲を公衆に直接聞かせる目的で演奏する権利は著作者が専有する―。著作権法が定める「演奏権」は、ピアノなどを習う音楽教室の演奏にも及ぶのか。

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が楽曲の使用料を徴収するのは不当だとして、音楽教室を運営する事業者が起こした裁判で、東京地裁が訴えを退ける判決を出した。演奏権を根拠に徴収権限を認める判断である。

 教室側は、生徒は「公衆」にはあたらず、講師や生徒の演奏は楽曲を「聞かせる目的」ではないと主張していた。地裁判決は、誰でも受講できることや、事業として多くの人数を抱えていることを挙げ、生徒は不特定多数の公衆にあたるとした。すんなりとは受け取れない理由づけだ。

 作詞家、作曲家らの権利を守ることは大切だが、著作権料を徴収する範囲をどこまで広げるべきなのか。あらゆる「商業利用」に網を掛けようとするJASRACの考え方は、音楽文化をかえって細らせる危うさをはらむ。是認した地裁の判断はうなずけない。

 JASRACは戦前に設立されて以来長く、音楽の著作権管理を一手に担ってきた。2000年代の規制緩和で独占こそ崩れたものの、占有率は依然9割を超え、圧倒的な優位は揺らいでいない。

 その力を背景に、これまでも著作権料の徴収対象を広げてきた。カラオケ店で客が歌う曲のほか、ダンス教室のレッスンで使う曲、結婚披露宴や葬式で流れる曲にも徴収は及んでいる。

 音楽教室からの徴収は当面、大手の事業者を対象とするが、いずれは個人経営の小規模な教室にも広げていく構えだ。教室の運営は商業行為である一方、音楽文化の振興に役割を果たし、学校の授業とは別の形で音楽教育を担ってきた面がある。

 提訴にはヤマハ音楽振興会をはじめおよそ250の事業者が加わり、徴収に反対する50万人余の署名も集まった。組織の権益拡大を優先するかに映るJASRACの姿勢を危惧する声は音楽界からも上がっている。

 私の曲を使いたい先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にせず、無料で使ってほしいな―。自ら作詞・作曲もする歌手の宇多田ヒカルさんはツイッターに書いた。

 著作権法はその目的に、著作者の権利の保護とともに、文化の発展に寄与することを掲げている。法の趣旨を踏まえ、楽曲の公正な利用をどう実現するか。社会に議論の場を広げたい。

(3月2日)

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