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上高地の山小屋「徳沢園」開業135周年 小屋の歴史を出版

徳沢園の前身となる牧場の開業から135周年を記念して出版した本を手にする上條さん(左)、菊地さん徳沢園の前身となる牧場の開業から135周年を記念して出版した本を手にする上條さん(左)、菊地さん
 北アルプス上高地(松本市安曇)の山小屋「徳沢園」が今年、上高地に前身の牧場を開業してから135周年を迎える。これに合わせ、4代目で社長の上條敏昭さん(70)=松本市=と、山岳ジャーナリストの菊地俊朗さん(85)=同=が共著「世紀を超えて徳沢園135年史」を出版した。多数残る徳沢周辺の古い写真を収めて小屋の歩みを紹介。各資料に断片的な記録しかなかった上高地の牧場についても丹念に調査し、ページを割いた。

 前身の牧場は、上條さんの曽祖父、百次良(ひゃくじろう)が1885(明治18)年に開業した。畜産振興を掲げる県が、自治体に種馬を好条件で貸し出したのがきっかけ。百次良は旧南安曇郡安曇村のリーダー的立場で、まとまった平地がある上高地に目を付け、ピーク時には400頭を超える乳牛、食用の牛馬を飼育した。

 牧場だった頃の歴史は菊地さんがさまざまな資料を調べて執筆した。徳本(とくごう)峠(2135メートル)を越えて上高地へ向かった牛馬の移動ルートも推測し、地図で示した。

 登山者が増えて宿泊施設が必要になり、牧場は1934(昭和9)年に閉鎖し、山小屋に衣替えした。夏場だけでなく、47年ごろから2013年までは「徳沢冬期小屋」を開設。小屋番を常駐させ、電話線を引いて冬期間の山岳基地とした。遭難者の捜索拠点でもあり、菊地さんは「徳沢園は陰で上高地を支えてきた立役者だ」と話す。

 上條さんは、小屋番の日誌や、井上靖さんが小説「氷壁」で徳沢園を舞台として取り上げたエピソードなどを執筆。昨年亡くなった女優八千草薫さんが何回も訪れたことを紹介し、徳沢園での八千草さんの写真も添えた。

 上條さんは「たくさんのファンが徳沢園を大きくしてくれた。これまでの感謝の思いを込めて本をまとめることができた」と話している。A5判183ページで千部印刷。本の問い合わせは徳沢園(電話0263・95・2508)へ。

(3月5日)

長野県のニュース(3月5日)