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国連の停戦要請 感染防止を和平の契機に

 「戦争という病を終わりにして、世界を苦しめている病気と戦おう」。国連のグテレス事務総長が記者会見を開き、世界中に即時停戦を呼び掛けた。

 新型コロナウイルスは国籍、民族、信仰とは無関係に世界中で猛威を振るう。紛争地では医療システムが崩壊し、感染の危険が増している。困難な人々を守るため、ただちに戦いを止め、真の敵と戦うべきだ―。

 重いメッセージである。すべての紛争当事者と関係国が耳を傾け、行動に移すべきだ。

 先例が生まれつつある。長引く内戦で「第2のシリアになる」と懸念されているリビアだ。

 2011年の「アラブの春」でカダフィ独裁政権が崩壊した後、民主化への道が開けぬまま国家分裂状態に陥った。

 現在は首都トリポリを拠点とする暫定政権と、東部を拠点にする「リビア国民軍(LNA)」が対立する。トリポリ周辺で昨年春から激化した戦闘で千人以上が死亡し、9万人の子どもを含む15万人以上が住まいを追われた。

 油田の利権や中東の政治対立が絡んで、旧宗主国イタリアやカタールは暫定政権を、エジプトやアラブ首長国連邦、ロシアなどはLNAを支援する。内戦は「代理戦争」の様相を呈している。

 ここにトルコが参入し、暫定政権を支持して部隊を投入したことで事態は一層複雑に。和平交渉は難航している。最近、国連の特別代表が辞意を表明した。

 皮肉なことに、泥沼化した状況に変化を与えているのが新型コロナの拡大だ。

 感染者が確認されていない段階ながら、暫定政権は非常事態を宣言した。すると双方を支える諸勢力が戦争行為や武器、兵員搬入の即時停止を呼び掛けた。

 各国とも紛争どころではないのだろう。LNAも停戦要請を受け入れた。

 一時的な小休止に終わる可能性はもちろんある。それでもウイルス禍は、争い続ける愚かしさを省みる契機になりえるのではないか。事務総長の要請にそんな思いも読み取れる。

 世界に目を広げれば、30億人が自宅にせっけんで手を洗う設備がなく、十分な感染予防ができない状況だ。人々が密集する難民キャンプの危険は言うまでもない。

 事務総長は貧困国のウイルス対策支援に20億ドル(約2200億円)が必要だと訴えた。国際社会は国連に協力して結束を強め、平和への足掛かりを得たい。

(3月25日)

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