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福島原発処理水 一方的な筋書きは捨てよ

 東京電力福島第1原発の処理水を巡る政府の地元説明が続く。

 放射性物質トリチウムを含む処理水を法定基準以下に薄めて海に流す―。国と東電は事実上、処理水の処分法を「海洋放出」に絞っている。

 原発事故の被害から立ち直りつつある漁業関係者には死活問題で反対の声が高まっている。

 福島第1では核燃料が溶け落ちた原子炉建屋に注ぐ冷却水に、山側から流入する地下水が加わり、汚染水が増え続けている。

 東電は特殊設備で一定の放射性物質を取り除いて「処理水」としタンクに保管するものの、2022年夏には容量が限界に達すると試算している。

 3年余にわたって処分法を議論した政府小委員会は、大気への放出も選択肢に挙げた上で、実績のある海洋放出の方が「確実」と提言した。風評被害対策の拡充も併せて求めている。

 放出に伴う被害は風評にとどまるだろうか。119万トンに及ぶ処理水の7割には、トリチウムのほかにも法定基準を超える放射性物質が残る。トリチウム以外は取り除けるとしてきた東電は、この事実を隠した経緯がある。

 最近になり、処理水の保管タンクで沈殿物が見つかった。放射性物質を含む危険性があるのに、東電は当初、政府小委に報告しなかった。福島の住民が不信の目を向けるのも無理はない。

 東電は処理水を再浄化するとし近く試験を始める。トリチウム以外は浄化できると証明した上で、地元と協議するのが筋だ。沈殿物の性質も突き止め、相応の対策を講じなければならない。

 最大で44魚種に上った出荷制限が、今年2月になってようやく全て解除された。福島県だけでなく茨城県などの漁協も海洋放出に強く反対している。

 東電は、風評被害が生じれば適切に賠償する方針を示す。他の賠償で、原子力損害賠償紛争解決センターの和解案を次々と拒否しているだけに、説得力を欠く。地域を成り立たせているなりわいを金であがなえるはずもない。

 当面は処理水のタンク保管を続ける方策がないか、東電は改めて検討すべきだ。前例がないとして政府小委が退けた地層注入、地下埋設の技術的可能性と環境への影響度合いも詳しく説明し、福島の住民の理解を得られる処分法を探らなくてはならない。

 海洋放出しか手段がないと、誘導するかのような議論の進め方は認められるものではない。

(3月27日)

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