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コロナと難民 過酷な状況放置できない

 紛争や迫害から逃れた難民や国内避難民が新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、一層過酷な状況に追い込まれている。命の危機にさらされる人々を守る支えが欠かせない。

 先月、ミャンマーのイスラム系少数民族「ロヒンギャ」の難民400人近くが乗った漂流船が、バングラデシュ当局に救助された。30人余が飢えなどで既に死亡していたと報じられている。

 マレーシアやタイで上陸を拒否され、2カ月ほど漂流を余儀なくされた。ウイルスを国内に持ち込む恐れがあるとの理由だった。ほかにも、立ち退きを強いられて漂流する船がある。

 ミャンマーではロヒンギャへの迫害が軍政下から長く続いてきた。2017年には治安部隊による武装勢力の掃討作戦で村が焼き打ちされ、多くの住民が国外に逃れた。帰還できる見通しは立っていない。国内にとどまった人々も依然厳しい状況の下にある。

 迫害を逃れた人々が難民として保護される権利は守られなければならない。各国はその責務を負っている。感染拡大の防止を盾に、追い払うような対応は認められない。一国任せにせず、国際機関や各国が協力して、受け入れる態勢をつくる必要がある。

 中東シリアでは、トルコ国境の避難民キャンプに逃れた人々が続々と、戦闘が再燃する危険を承知で北部イドリブ県の自宅へ戻っているという。キャンプで感染が広がるのを恐れてのことだ。

 人が密集している上、衛生環境は劣悪だ。医療施設も整っていない。その状況は、国外に逃れた人たちが暮らす難民キャンプにも共通する。感染者が出れば、一気に広がりかねない。

 難民を受け入れてきた国は、感染拡大に伴う経済活動の停滞や財政負担の増加で、キャンプの人々を支える余裕を失っている。難民自身が働いて生活を維持することも難しくなっている。苦境は深まるばかりだ。

 国際的な支援が欠かせない。各国は自国内の対応で手いっぱいに見えるが、それでは世界規模の感染症の流行に立ち向かえない。国内で拡大を抑え込めても、他国で感染が広がっている限り、次の感染の波が押し寄せてくる。1918年のスペイン風邪でも、2波、3波が世界を襲った。

 国際的な協力体制を敷くことなしに感染症を克服する道はない。そのことを再確認し、最も弱い立場にある難民、避難民を支えるために何ができるかを考えたい。

(5月5日)

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