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県内伝統の学校登山、中止の動き広がる 移動のバス・山小屋で「3密」

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、明治期に始まったとされる伝統の学校登山を中止する動きが県内の中学校で広がっている。休校で減った授業時間数を取り返す必要がある他、移動に使うバスや宿泊する山小屋で密接、密集、密閉の「3密」が避けにくいためだ。生徒の安全確保の難しさから敬遠され、近年は減少傾向。山岳関係者は、これを機にやめてしまう学校が出ないかと心配している。

 上伊那郡箕輪町の箕輪中2年生は7月20、21日に中央アルプス駒ケ岳に登る予定だったが、中止に。登山口までの一斉移動にはバスしか考えられないためという。

 1913(大正2)年、前身の中箕輪尋常高等小学校の生徒9人を含む11人が遭難し、新田次郎が小説「聖職の碑(いしぶみ)」に書いた。箕輪中は毎年この史実を学び、ルート上の遭難記念碑に黙とうしてきた。太田聖尚(きよひさ)教頭は「中止は恐らく初。大切にしてきただけに残念だが仕方ない」と話す。

 伊那市では全6中学校が中アや南アへの登山を中止した。市教委は「休校で減った授業時間の確保が必要。山小屋での3密も回避できない」。北ア乗鞍岳への登山が多い松本市では、1泊2日を予定した清水中が日帰りキャンプに変え、丸ノ内中が日帰り登山を中止方針。旭町中は延期した。上田市内でも複数校が中止や延期を検討中だ。

 毎年、学校登山の状況を調べている県教委学びの改革支援課によると、2015年度は全体の78・6%に当たる147校が計画したが、19年度は6割を切った=グラフ。2年前から実施しなくなった中信地方の中学校の教頭は「生徒が熱中症にかかる恐れがあり、準備に時間がかかるためだ」と実情を明かす。

 学校登山は、教育に効果があるとして続けられてきた。大町岳陽高校(大町市)山岳部顧問の大西浩教諭は「身近な自然に親しむことで情操教育や郷土を大事にする気持ちを育む」と強調。中止は理解しつつ「一度途切れたことで来年度以降もやめてしまわないか」と懸念する。

 県山岳総合センター(大町市)の傘木靖所長は「友達と一緒に登った達成感は貴重な体験」と指摘。登る山や行程を再考して新たな在り方を考えてほしい、と求めている。

(5月21日)

長野県のニュース(5月21日)

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