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夏の甲子園中止 もう一つの道を諦めない

 8月に阪神甲子園球場で予定された全国高校野球選手権大会の中止が決まった。新型コロナウイルスの影響により、春の選抜とともに球児が憧れる最高峰の舞台が戦後初めて失われる。

 今年は全国で約3800校の参加が見込まれた。先週末に中止の方向が報じられても、開催に望みをつないでいた野球部員は多かったのではないか。中でも陰になり日なたになり引っ張ってきた3年生たちは、どれほど無念か。

 コロナ感染が落ち着きつつある一方、長時間の移動や宿泊に伴う感染リスクも避けがたい。日程を順送りした場合は学業に支障が出る。長期休校で部活動が制限される中、練習不足によるけがや体調悪化も懸念された。

 部員たちが心を整えるのは容易ではないだろう。時間をかけて仲間と向き合い、培ってきた日々の重みを確かめ、この先に目を向けてほしい。その間、指導者や教職員らの言葉は特に大切だ。

 全国高校総体、吹奏楽や合唱など文化部の全国大会も中止が相次ぐ。予選会の日程などを考慮すれば致し方ない面はあっても、横並びの中止判断は再考したい。

 地域の状況に応じて、規模や応援、観覧者を限定して開くなど工夫できる余地はないか。

 日本高野連は地方独自の大会開催を、自主判断に任せるとしている。長野県高野連は4地区に分けた代替大会を検討中だ。秋に始まる選抜大会の地区予選をにらみ、上位にシード権を与える構想で近く具体策を話し合う。

 多くのチームが一堂に会するには課題があるとしても、学校や競技関係者が知恵を集め、感染予防を徹底し、部活動の区切りとなる場を実現してほしい。

 球児が練習の集大成を発揮できれば、他の競技や活動の独自開催にも大きなきっかけとなる。

 早稲田実高OBの王貞治氏は、夏の甲子園を「日本国民の心のよりどころ」と言う。県民や出身者がこぞって代表校を応援し、世代を超えて話題に盛り上がる。中止で地元住民の落胆も大きい。

 地域の人たちとのつながりは試合の時だけではない。日頃の地味な活動の中にもある。

 昨年秋、台風19号の被災地に多くの生徒が救援に駆けつけた。その中に、昨夏の甲子園に初出場した飯山高や長野西高の野球部員らが泥出しを手伝う姿があった。

 冬には県内各地で部員が雪かきをする様子も見られる。こうした行動は特に高齢者を元気づける。改めて意識したい。

(5月22日)

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