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中国全人代開幕 内憂外患を直視する時

 中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が開幕した。

 新型コロナウイルスの影響は中国経済にどの程度及ぶのか。2020年の国内総生産(GDP)の成長率目標が注目されたが、示せなかった。

 成長率目標は経済政策の基礎となる重要な数値だ。設定見送りは初めてで、高い成長を背景に内政と外交を推し進めてきた中国にとって極めて異例だ。

 李克強首相は「経済・貿易の情勢は不確定性が非常に高い」と述べた。感染拡大がほぼ収束し、経済活動の再開が欧米より先行する中国でさえ、今後の展開が見通せない厳しい現実を物語る。

 世界第2の経済大国のけん引力不足が鮮明になり、各国経済の前途もさらに描きにくくなった。

 開催は2カ月半遅れた。コロナ禍の前、成長率目標は6%前後に定めたと伝えられていた。1〜3月期のGDPが四半期ベースで初のマイナス成長になると、数値目標の設定は難しい、との見方が強まっていた。

 数値が高いと、地方が無謀なインフラ整備を競い、08年リーマン・ショック後の景気対策のように生産設備の過剰や不動産バブルを引き起こす懸念がある。

 低い数値では、20年GDPを10年比で倍増させる目標と現実との乖離(かいり)があらわになるという、苦しい事情があったからだ。

 当面は地方経済の救済が急務だ。約1兆元(約15兆円)の特別国債発行などで、雇用の安定と生活保障を優先する。

 厳しい財政下にかかわらず、国防予算は前年比6・6%増の約1兆2680億元とした。「新冷戦」と呼ばれる厳しい対米摩擦を背景に、伸び率を鈍化させつつも軍拡路線は堅持している。

 足元の経済指標は回復を見せ、習近平指導部は「感染症対策に成果を収めた」と胸を張る。それでも外需の低迷は長期化を余儀なくされるだろう。

 急成長が前提の中国社会は大きな曲がり角を迎える可能性がある。覆い隠されていた不公正や格差、思想弾圧、少数民族の抑圧、強引な海洋進出への不満が内外で一気に噴き出すかもしれない。

 警戒する当局は全人代を前に政権に批判的な学者らをまたも拘束し、感染死の政治責任を問う遺族らにも圧力をかけている。政治課題を対話で解決する回路がなく、異論を力で封じるしかない。

 コロナ危機が内憂外患を一層深めている。硬直した強権政治の修正こそ、打開への道だ。

(5月23日)

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