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マイナンバー 無理押しさらに重ねるな

 制度への根本的な信頼が欠けているのに、あの手この手で用途を広げようとすることにそもそも無理がある。政府が力を入れるマイナンバー(個人番号)カードの普及促進策だ。

 今度は、運転免許証との一体化を検討するという。制度の改善に向けた作業部会の初会合で菅義偉官房長官が表明した。具体化の工程表を年内に策定する方針だ。

 国家資格証や外国人の在留カードとの一体化についても話し合う。学校での健康診断の記録や学習データの管理に活用することも検討課題に挙がっている。

 9月からは、マイナンバーカードの保有者を対象に、買い物などの額に応じてポイントを還元する消費活性化策が始まる。5千円分を上限とするものの、25%という破格の還元率でポイントを付与する。あからさまな誘導策だ。

 ほかにも、来年3月からは健康保険証として利用できるようになる。政府は、国と地方の公務員には半ば強要する形でカードの取得を促してもきた。それでも、4年半近くを経て、普及率は17%ほどにとどまっている。

 運転免許証との一体化で気がかりなのは、既存の免許証を将来的に廃止してマイナンバーカードに切り替える案が出ていることだ。そうなれば、運転免許の保有者はカード取得を拒めなくなる。強引なやり方で普及が図られないよう、作業部会の議論を注意深く見ていかなくてはならない。

 政府が2017年にまとめた利活用の工程表には、さらに多様なカードの使い道が挙がっている。社員証、診察券、図書館の利用券、カジノの入場資格証…。クレジットカードや銀行のキャッシュカードと一体化する案もある。

 マイナンバーは個人情報の一元管理につながる懸念が拭えない制度だ。番号の利用を税と社会保障、災害の3分野に限定して法は成立したが、運用が始まる前から改定され、使途が拡大されてきた。

 情報技術が進み、個人の行動は今やあらゆるところでデータとして収集され、集積されている。番号と関連づいたカードが用途を広げるほど、一つの番号で個人データが結びつけられる恐れは増す。プライバシーが侵され、国家による管理や監視の強化につながる危うさがある。

 政府が利活用を言う一方で、税負担や社会保障給付の公平、公正を図るはずの制度本来の目的はかすんでいる。なぜカードの取得を促すのか。納得がいく説明もなく、無理押しを重ねてはならない。

(6月29日)

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