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香港への統制 自治と自由、窒息させるな

 自治と自由を窒息させる横暴な振る舞いと言うほかない。中国が香港に導入する国家安全法制である。全国人民代表大会(全人代)の常務委員会で30日にも成立する見通しになった。

 全人代で導入する方針を決めてから1カ月。常務委を立て続けに開き、成立すれば翌7月1日から施行するという性急さだ。

 秋にある香港の立法会(議会)選挙の届け出が7月半ばに始まることが理由だろう。民主派の立候補を阻む意図が見て取れる。

 国家分裂や中央政府の転覆、外国勢力との結託を犯罪行為として取り締まる香港国家安全維持法案が柱だ。出先機関を置き、中央政府の直接の執行を可能にする。

 中国の治安当局が容疑者を拘束して本土で裁判にかけられるということだ。香港で裁判をする場合も行政長官が裁判官を指名する。中央の意向を受けて訴追する側の長官が裁判官を選ぶのでは、司法の独立は保てなくなる。

 民主化を訴え、自由の圧迫に抗議して声を上げる市民が、当局の胸三寸でいつ拘束されるか分からない。本土で国家安全法が施行された2015年、人権派の弁護士や活動家が一斉に連行されたことが重なり合って見えてくる。

 1997年に英国から中国に返還された香港は、両国の合意で、「一国二制度」の下での高度な自治を50年間保障された。本土とは別に基本法(憲法)が定められ、法制度そのものが異なる。

 香港の法律は本来、立法会で定めるが、中央の権限で例外と位置づけ、香港の他の法に優越させる。昨年来の大規模な抗議デモを香港政府が抑え込めないことに業を煮やし、中国指導部が頭越しに強圧的なやり方に出た形だ。

 危ういのは司法の独立だけではない。香港政府には国家安全維持委員会を新たに置き、中央から顧問を派遣する。これまでに増して行政に中央政府の意向が強く働くのは明らかだ。一国二制度による自治が土台から揺らぐ。

 強権の発動は国際社会との溝を広げている。欧州連合(EU)の議会は国際司法裁判所への提訴を検討する決議を可決し、日本を含む先進7カ国の外相は中国に再考を迫る共同声明を出した。

 内政干渉だとする中国政府の態度を米国との対立激化がさらに硬くさせている。対決姿勢を取るばかりでは事態がこじれ、香港の人々を孤立させかねない。安全法制の運用に国際社会が厳しい目を向け、中国に粘り強く働きかけていくことが欠かせない。

(6月30日)

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