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認知症不明者 地域の力で見守ってこそ

 認知症が原因とみられる行方不明者が増え続けている。全国の警察には昨年1年間で延べ1万7479人の届け出があった。

 このうち245人が昨年中に見つからなかった。2018年以前の届け出も含めて460人の死亡が判明している。

 過去には、不明中に車を運転して事故を起こしたり、鉄道事故に遭遇したりする事例もあった。

 25年には高齢者の5人に1人、約700万人が認知症になると推計されている。事故を防ぎ、本人や家族が安心して暮らせる地域になるよう、対策に一層力を入れていかねばならない。

 警察庁によると、統計を取り始めた12年以降、過去最多を毎年更新し、7年で1・82倍になった。長野県警への昨年の届け出は160人で過去3番目に多い。

 不明者を早期に発見するための対策は各地で進んでいる。

 行方不明の心配がある人の特徴や連絡先の事前登録、住民参加による不明者捜索の模擬訓練、警察と行政や民間企業との情報共有ネットワーク構築などだ。

 近年は、行政が衛星利用測位システム(GPS)端末を貸し出したり、家族らの情報を読み取れるQRコードを衣服に貼り付けたりする取り組みも広がる。不明中の事故に備えた保険に公費で加入する自治体も出始めた。

 ただ、GPS端末は充電がされなかったり持ち歩くのを忘れたりすると役に立たない。QRコードは気づかれない恐れがある。

 機能について、家族らにきちんと説明し理解を得る必要がある。運用側は、個人情報を扱っていることも忘れてはならない。

 何よりGPSやQRコード頼りではいけない。一人一人が関心を持ち、気遣い助け合う地域力を高めることが大切だ。

 他人の目を気にする当事者や家族は少なくない。行政は、正しい理解と知識で手助けする「認知症サポーター」の養成も取り入れながら、家族が気兼ねなく声を上げられる見守りネットワークを各地でつくっていきたい。

 不明中は想像よりも広く行動しているといわれる。地域によって取り組みに温度差があるのはよくない。広域連携も重要だ。

 コロナ禍で、感染を恐れて閉じこもりがちになった高齢者は多い。認知症の進行が懸念される状況が起きている。

 地域の見守り活動も思うに任せないだろう。電話やインターホン越しの声掛けなど工夫を凝らして、つながりを保ち続けたい。

(7月7日)

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