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豚熱1年 再建断念 高森の養豚農家 設備投資負担重く

豚熱が発生した豚舎を見つめる原さん。当時まいた消石灰が今も残っている=7日、高森町豚熱が発生した豚舎を見つめる原さん。当時まいた消石灰が今も残っている=7日、高森町
 昨年7月13日に県内で野生イノシシの豚熱(CSF)感染が判明してまもなく1年。その2カ月後、飼育中の豚への感染が確認され、全112頭が殺処分された下伊那郡高森町の養豚農家が現地での経営再建を断念したことが10日、分かった。経営者の原誠さん(46)は設備投資などの負担が大きいと判断した。現在も野生イノシシの感染確認は続いており「殺処分は二度としたくない」との思いも強い。今夏、キュウリと飯田下伊那特産の市田柿の栽培農家として新たな一歩を踏み出す。

 養豚業は50年ほど前に父親(83)が始めた。小規模ながらも経営を続けてきた父が体調を崩し、原さんは2018年12月、飯田市内の運送会社を退職して引き継いだ。

 その3カ月前、国内で26年ぶりに岐阜市の養豚場で豚熱発生が判明。県内では19年7月13日、木曽郡木曽町の野生イノシシ1頭で初めて感染が確定した。原さんは豚舎に消石灰をまき、出入りの際の消毒を徹底したが、9月19日、豚熱は発生した。

 県が殺処分を行うことになった。当日、いつもなら餌を求める豚の鳴き声が響く豚舎は静かだった。「豚たちも異変に気付いていたのかもしれない」。自身も豚の誘導など殺処分を手伝った。「自分の子ども(のような存在)をなんで自分の手で殺さないといけないのか」。そんな思いを押し殺し、作業をやりきることだけを考えた。

 農林水産省はこの日、豚へのワクチン接種を実施する方針を固めた。それまでは豚肉の輸出入などに影響するとして慎重姿勢を続けてきたが、方針を転換。県内では10月にワクチン接種が始まり、その後、県内養豚場での発生はない。「方針転換があと1カ月早かったら」との思いが込み上げた。

 新型コロナウイルスの感染拡大が社会の関心を集める一方、野生イノシシの豚熱感染も少しずつ広がっている。10日現在、東北中南信の41市町村で計223頭の感染が確認されている。養豚場での感染リスクは残っており、生産者は気が抜けない状況が続く。さらにアジアでは致死率のより高いアフリカ豚熱(ASF)が拡大。有効なワクチンがなく、いったん日本国内への侵入を許せば死活問題となる。

 農水省の疫学調査チームは昨年12月、原さんの養豚場での豚熱発生は、感染イノシシに由来するウイルスが人や小動物、手押し車などによって豚舎に持ち込まれた―と推定する分析結果をまとめた。

 「再び豚を飼いたい思いもあるが、また殺処分するのは耐えられない」。経営再開には、運転資金や設備投資など2億円以上が必要だ。豚熱発生を「仕方なかった」とようやく思えるようになった今春、再建断念を決めた。

 キュウリと市田柿は、もともと父親が高森町内で栽培していた。キュウリは新たに農地20アールを借りて規模を拡大。ビニールハウス4棟を建設中で、25日に定植を始める予定だ。妻(43)も5月、22年間勤めた会社を辞め、一緒に農業を始める。原さんは「養豚を続ける仲間たちも気が抜けない状況の中で頑張っている。自分は方向転換するが、消費者においしい食べ物を届けたいという同じ気持ちで歩んでいきたい」と話している。

(関誠)

(7月11日)

長野県のニュース(7月11日)

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