長野県のニュース

石炭火力輸出 いつまで温存するのか

 時代遅れが明白な電力ビジネスをいつまで温存するつもりか。

 政府が、石炭火力発電の輸出支援について新たな方針を決めた。輸出相手国の脱炭素化政策の策定に協力することなどを条件に、対象の発電設備は高効率なタイプに限るとした。

 輸出自体は引き続き可能だ。「厳格化」とも「支援継続」とも読める内容になっている。

 石炭火力は地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を多く排出する。排出削減の動きが世界的に強まる中、輸出を続ける日本に向ける国際社会の目は厳しい。

 発電を巡る世界の状況は急速に変化している。再生可能エネルギーと比較した石炭火力のコスト面の優位性は低下した。石炭火力は最新型でも天然ガス火力の2倍以上のCO2を排出する。

 現実を直視し、輸出を完全に中止すべきだ。再生可能エネルギーの支援拡大へ、思い切った政策転換を図らねばならない。

 輸出支援の見直し論議は、全面中止を狙う環境省と、業界団体などをバックに支援継続を図る経済産業省の攻防になった。経産省が環境省を押し切ったとみることもできるだろう。

 経産省が強調したのは、コスト面で石炭を選択せざるを得ない発展途上国もある、との主張だ。

 中国が石炭火力の輸出に力を入れていることも支援継続を訴える材料になった。日本が輸出しなければ中国企業に市場を奪われていくだけだ、との理屈である。

 環境省の有識者検討会が5月にまとめた報告書は、2014年には大半の国でコストが最も低かったが、19年には世界の約3分の2の国・地域で石炭より再生エネが安くなったと分析している。

 世界の電力のビジネスチャンスは近年、石炭より再生エネへ大きくシフトしているのである。

 技術力の高さを誇る日本の石炭火力も、取り巻く状況は変わっている。電力事業に携わる専門家ネットワークの分析だと、中国製の石炭火力は性能や耐久性が向上しており、日本製が優位とは言えなくなった。退場を迫られる分野で中国と競って公的支援を続けることが生産的とは思えない。

 輸出を検討する際にまず念頭に置くべきは、石炭火力発電所は平均して50年以上の稼働が見込まれるという点だろう。いったんできれば相手国のエネルギー供給の将来を長く縛ることになる。

 そんな設備を売り込む一方で脱炭素化の政策に協力するというのは、矛盾していないか。

(7月11日)

最近の社説