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芦部信喜さんの遺品 遺族が母校・伊那北高同窓会に寄贈

芦部信喜さんの米留学中のノートと文献。右端の文献の下に芦部さんのサインがある芦部信喜さんの米留学中のノートと文献。右端の文献の下に芦部さんのサインがある 伊那北高校同窓会に寄贈された芦部信喜さんのノート・文献と著書伊那北高校同窓会に寄贈された芦部信喜さんのノート・文献と著書
 戦後日本を代表する憲法学者、芦部信喜さん(1923〜99年、駒ケ根市出身)のノートや著書などの遺品が、遺族から母校の伊那北高校(伊那市)同窓会に寄贈された。ノートは、芦部憲法学の中核である「憲法訴訟論」を開拓するきっかけになった米留学中に書かれたもので貴重だ。

 寄贈されたのはノート2冊、文献2冊と著書40冊。芦部さんが亡くなるまで暮らした都内の家の書庫を遺族が昨年末、整理した一部。留学時代のノートはまだ数十冊残っており、整理が付き次第、同窓会に贈るという。

 芦部さんは東京大助教授時代の1959(昭和34)年から2年間、米ハーバード・ロースクールに留学。帰国後、違憲訴訟を闘う技術である憲法訴訟論を広めるため司法研修所でセミナーを行った。

 論を実証するため自衛隊の合憲性を争う恵庭事件や長沼事件など多くの憲法事件にも関わった。

 留学ノートの一冊は「アメリカ憲法」「アメリカの統治」との表題があり、代表的な英語文献を抜粋し、所々に日本語訳が記入されている。「重要」「意味不明」などの書き込みも見られる。

 もう一冊は「比較憲法の研究方法」という仏語の論文を書き写したもの。文献は一冊が、米バンダービルト大の紀要(論文集)で、表紙に芦部さんのサインがある。もう一冊は「最高裁を知るには」というロースクール教授の著書の英文タイプ印刷版。

 芦部さんの教え子の高見勝利・北海道大名誉教授は「ノートがもっとそろえば、留学前の芦部先生のドイツ憲法学的な思考がアメリカ憲法学的思考に移っていく過程が分かるかもしれない」とみている。

 寄贈著書は、大学の教科書としても広く使われている概説書「憲法」(岩波書店)が93年発行の初版から現在の7版に至るまで2冊ずつ。その中国語版(清華大学出版社)もある。ほかに「憲法訴訟の現代的展開」「憲法訴訟の理論」(ともに有斐閣)など。

 寄贈資料は、同窓会事務局が入る「伊那薫ヶ丘会館」(伊那北高正門前)で保管し、閲覧できるようにする。同窓会の岩崎靖事務局長は「本校の学校目標の第一は平和を希求し、真理と正義を探究する資質を養うことで、芦部憲法学と共通する。芦部先生の資料を長く保存し、研究に役立てることは母校の使命だ」と話している。

(7月14日)

長野県のニュース(7月14日)