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「奇跡の天神さん」次代へ 上田 「災害の象徴」修復目指す

復旧を待つ湯里天満宮=22日、上田市復旧を待つ湯里天満宮=22日、上田市 本殿を見上げる池内さん(左)と斎藤さん本殿を見上げる池内さん(左)と斎藤さん
 茶色い地肌があらわになった急斜面にぽつんと、屋根にブルーシートが掛かったままの本殿が立つ。鹿教湯温泉に近い上田市西内の国道254号沿いにある「湯里(ゆのさと)天満宮」。昨年の台風19号で山腹が高さ約70メートル、幅約50メートルにわたって崩れて、倒れた杉が本殿を突き抜けたが全壊は免れた。45年前、取り壊されそうだったのをここに移築した地元の池内宜訓(よしのり)さん(80)と斎藤兵治さん(82)が、災害を伝える「奇跡の天神さん」として復旧を目指している。

 もともとこの本殿は「お天神さん」と呼ばれて埴科郡戸倉町羽尾(現千曲市)にあったが、明治時代の神社の整理統合でご神体を他の神社に移したといい、老朽化。時を経て取り壊し話が進んでいた。1975(昭和50)年、これを聞き付けた池内さんが訪ねて見たのは、床が朽ち、雨漏りもする荒れた姿。それでも「重厚な造り。壊されるのはしのびなかった」と、移築を思い立ったという。

 鹿教湯温泉で飲食店を営んでいた池内さんは、旅館を経営していた斎藤さんに声を掛け、意気投合。ともに30代で地域を良くしたい気持ちにあふれていた。「本当に造るのか」と冷ややかな反応もあったが、寄付を集め、斎藤さんが所有する現在地に移した。知人の会社社長が菅原道真像を寄進、ご神体とした。

 76年に松本市とを結ぶ地元待望の国道254号三才山トンネル開通を控え、交通量が増える懸念があった。交通安全への願いを込め、文殊菩薩をまつる鹿教湯温泉の文殊堂(県宝)と合わせて子どもたちの健やかな成長も願った。今では、地元観光協会が呼び掛ける、周辺の寺社などを訪ねる「二十一番名所巡り」にも「湯の里天神社」と紹介され、シーズンには受験生も参拝している。

 現在、台風19号で倒れた杉の木は撤去されたが、今月の長雨で再び何本か倒れた。さらに斜面が崩れる危険があり、県はコンクリートの土留め工事を見合わせている。

 「いつどんな災害が起きるか分からない時代になった」と池内さん。それだけに、二度の苦境を乗り越えてきた本殿を、台風被害の象徴としても守り伝えていこうと、近く修復費用の寄付を呼び掛けることにしている。(大久保みちる)

(7月31日)

長野県のニュース(7月31日)