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米大統領選 世界を左右する政策論争

 11月の米大統領選の構図が決まった。

 民主党候補となるバイデン前副大統領が、副大統領候補に黒人女性のハリス上院議員を選んだ。正副大統領候補の顔触れが出そろい、選挙戦が本格化する。

 今後の世界情勢に甚大な影響を与える重要な選挙である。

 トランプ大統領は、労働者層の怒りの矛先を外国に向け、極端な保護主義や自国第一主義、反移民政策を進めてきた。

 環太平洋連携協定(TPP)や温暖化対策の枠組み「パリ協定」からの離脱を決め、世界保健機関(WHO)脱退も通告した。中国との対立は深まる一方だ。

 コロナ後の国際社会や経済の立て直しで、米国が果たす役割は大きいはずだ。国際的な孤立を深めるトランプ外交の継続か、バイデン氏が主張する国際協調路線に復帰するのかが問われる。

 核を巡る情勢も厳しさを増している。ロシアとは開発競争が激化し、北朝鮮問題も解決策が見えない。イラン核合意離脱と制裁再発動は深刻な対米不信を招いた。

 米国が超大国の責任を放棄したといえる気候変動対策も争点になる。バイデン氏は脱炭素社会の実現に2兆ドル(約214兆円)を投資することを掲げる。実現性や国民負担などが議論になるだろう。

 トランプ氏は好調な経済に支えられて、支持層は固かった。

 情勢を大きく変えたのが、コロナ禍と白人警官による黒人男性暴行死事件である。

 米国で確認された感染者は500万人を超え、死者は16万人余に上る。いずれも世界最多だ。

 黒人や中南米系移民には、リスクがあっても働き続けなければ生活できない低所得者が多く、感染が広がった。不満が高まった時期に起きた暴行死事件は、人種差別問題を大統領選の大きな争点に押し上げた。

 バイデン氏は「米国の姿を映した政権にする」として人種間融和を掲げる。当選すれば黒人としても女性としても初の副大統領になるハリス氏を選んだのは、多様性を重視するメッセージだろう。

 77歳と高齢のバイデン氏は、当選しても1期で勇退する可能性もある。55歳のハリス氏は24年大統領選の有力候補になり得る。今回の選挙では次期リーダーとしての資質が問われる。

 これまでの大統領選では、相手の欠点を攻撃しあう中傷合戦が目に余った。今回もトランプ氏がハリス氏の人格攻撃を始めている。正面からの政策論争を求めたい。

(8月14日)

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