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核燃料輸入ゼロ 原発の夢想を捨てねば

 原発で使う核燃料の輸入が2019年、ほぼゼロになった。原料となるウランや、ウランを加工した燃料集合体の輸入である。

 11年の福島第1原発事故後、新規制基準に適合して再稼働した原発は事故前にあった54基のうち9基にとどまる。調達が必要な量が著しく減った。

 安全コストの大幅な増加や原発に対する厳しい世論で再稼働は停滞し、困難さを増している。

 輸入ゼロは、1960年代半ばから約50年の歴史で初めて。事業としての成立自体が既に難しくなっていると見るべきだろう。

 原発は国と大手電力会社が「国策民営」で推進してきた。現状を踏まえ、撤退に向けた具体的な検討に入る必要がある。

 少量のウランから膨大な電力を生む原発は「準国産エネルギー」と銘打って進められた。使用済み燃料を繰り返し使う核燃料サイクル政策も掲げ、その実現は資源小国の日本の悲願とされた。

 しかし福島で、ひとたび事故が起きれば取り返しのつかない被害を生む現実を突き付けられた。

 核燃料サイクルでは、再処理した燃料を使う高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)がトラブル続きの末に廃炉が決まった。行き場のない使用済み核燃料が各原発に留め置かれている。政策の破綻は隠しようがない。

 それでも安倍政権は原発を活用する姿勢を維持している。18年に決定したエネルギー基本計画は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、30年時点の電源構成比率で20〜22%を目標とした。達成には20〜30基の再稼働が必要な計算だ。夢想に近い。

 こだわる背景には、諦めると現在は会計上の「資産」である使用済み核燃料がごみとして扱われ、電力会社の経営に大きな影響が及ぶ事情がある、との指摘がある。政府と電力会社は不都合な議論を避けているのではないか。

 国産エネルギーの拡大を目指すなら、原発ではなく再生可能エネルギー分野に思い切った施策を講じるべきだ。現行計画は30年の目標を22〜24%としている。

 全国34の道府県などでつくる自然エネルギー協議会は先月、再エネ比率を40%超とする目標を次期計画で設定するよう提言。自然エネルギー財団(東京)も今月、炭素税導入などの政策で45%が可能との試算結果を発表した。

 政府は、基本計画の見直しに先立つエネルギー戦略の議論を9月にも始める方針だ。現実を直視した抜本的な検討を求める。

(8月14日)

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