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カジノ整備 立ち止まり見直すべきだ

 国内にカジノを開設する構想が暗礁に乗り上げている。成長戦略の柱と政府は位置づけてきたが、その前提は崩れ、もはや無理押しできる状況にない。立ち止まって見直すべきだ。

 カジノを中核とする統合型リゾート施設(IR)の整備事業をめぐって秋元司衆院議員が収賄罪で起訴された汚職事件は、事業者の公平な選定に重大な疑義を抱かせた。利権の温床となる危うさが浮き彫りになっている。

 事業の具体化に向け、政府が1月に策定するはずだった基本方針は、事件を受けて先送りされたままだ。自治体が整備計画を国に申請する指針が示されず、その先の審査や整備地域の認定がいつになるのかも見通しが立たない。

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、海外のカジノ事業者が深刻な業績悪化に陥ったことが追い打ちをかけた。IRの誘致に名乗りを上げた横浜への進出を目指していた米大手ラスベガス・サンズは5月に撤退を表明している。

 海外のカジノの落ち込みは顕著だ。全施設がいったん営業を停止したマカオでは再開後も客足が戻らず、4月の収益は前年より9割以上減ったという。日本への進出に見切りをつける動きはさらに広がるとささやかれている。

 誘致を目指す自治体側の準備も進んでいない。横浜はコロナへの対応を優先し、整備計画の策定に向けた実施方針の公表を見送った。当初予定した6月に続き2度目の延期である。

 先行して事業者の公募を始めていた大阪も、書類提出の期限を延期している。2025年に開催する万博までの開業を目指していたが、断念せざるを得ない状況に追い込まれた。

 カジノをつくることが地域の振興に果たして結びつくのか。根本的な疑問を積み残したままIRの構想は推し進められてきた。

 ギャンブル依存症の深刻化につながる懸念も消えない。政府が「世界最高の水準」と誇る規制はその実、制限が緩い。入場者に賭け金を貸すことまで認めている。

 依存症の対策がおろそかにされてきたことを踏まえればなおさら、カジノを許容する理由は見つからない。巨費を投じた末に行きづまれば、地域の財政に重荷がのしかかることにもなる。

 既定方針だからと進めることは認められない。誘致に反対する声は各地の市民から上がっている。誰のため、何のための構想なのかを問い直すべきだ。立ち止まる機会を失してはならない。

(8月26日)

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