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自民総裁に菅氏 「負の遺産」を直視せよ

 安倍晋三首相の後継を事実上決める自民党総裁選で、菅義偉官房長官が選出された。

 国会議員票394と都道府県に3票ずつ割り当てられた地方票141の計535票のうち、377票を獲得し、有効投票の約7割を占めた。圧勝といっていい。

 菅氏は「安倍政治」の継承を主張した。党内7派閥のうち主要5派閥が菅氏の支持を決めており、国会議員票の多くを菅氏が獲得することは予想されていた。

 菅氏がどんな政権を目指すのか明らかにする前に支持を正式に決めた派閥もある。従来の権力構造を維持したい派閥力学が政策に優先した結果といえる。

 コロナ禍の中で政治空白をつくらないことを理由に、100万人超の党員・党友投票が実施されなかった。政権を発足させても国民の信任を得ているかのように運営してはならない。

 とはいえ、多くの都道府県連が予備選を実施した。地方票の6割以上に当たる89票を菅氏が獲得した意味は一定程度ある。

 コロナ禍で経済が失速し、雇用環境も不安定化している。今後の回復の見通しもついていない。当面は変化より政策の継続性を地方が重視した結果といえるだろう。地方出身やたたき上げを前面に出した菅氏の戦略も功を奏した。

 ただし、論争は低調で日本の将来像は不明確なままだ。菅氏は安倍政権の課題を直視せず、質問されても回答をはぐらかし、改善していく姿勢を示さなかった。

 日本記者クラブ主催の討論会では、菅氏は最低賃金の上昇などを根拠に格差の拡大を否定。持続可能な社会保障や財政再建に向けた方策についても「経済を成長させることが必要」と述べ、真正面から答えなかった。

 経済再生の方策を示さず、成長を処方箋とするのは無責任であり幻想を振りまいているだけだ。

 地方振興策でもふるさと納税導入などの実績を誇示するものの、高額所得者の優遇など制度の矛盾は明らかだ。

 森友、加計学園、桜を見る会の問題も解決済みの姿勢だ。コロナ対策で国民に批判されていることを指摘されても「海外では評価されている」と開き直りともとれる回答をしている。

 疑問に答えず、説明しない姿勢は安倍政権の体質そのものだ。継承の掛け声の中で「負の遺産」まで受け継ぐのは認められない。

(9月15日)

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