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中小企業再編 さらに淘汰を促すのか

 菅義偉政権が、中小企業の定義を変える方向で中小企業基本法の見直しに着手する。

 企業に再編や統合を促し、生産性の向上を図るためという。

 中小企業には、税制上の優遇措置や補助金の対象になりやすい利点がある。保護を受け続けようとあえて従業員数や資本金を増やさない事例がある、との指摘を踏まえた対応である。

 菅政権は規制改革の断行を前面に打ち出している。詳細は今後詰めるが、見直しは基本的に市場原理の阻害要因を取り払う発想で進むとみてよいだろう。

 生産性は、企業規模が大きくなるほど高まる傾向がある。従業員の賃金も高い。新たに収益が確保できる分野を見いだして事業拡大に踏み出す企業が多いほど、経済は活性化していく。

 見直しによって優遇措置を失う中小企業が増えれば、人員の削減や経営を断念するケースが続出する事態も考えられる。ほそぼそとした経営であっても重要な役割を果たしている企業は少なくない。改革で地域の空洞化を招いては元も子もない。

 追い込まれ、大企業の傘下に入って生き残りを探る中小企業も増えるだろう。そうした再編や統合を政策的に誘導するのか。各地の主体的な経済再生を目指す観点からも検討が要る。

 中小企業対策を規制改革の発想一辺倒で進めるのは問題が多い。地域の実態に即して考えることの重要性を確認しておきたい。

 中小企業の定義は業種で違い、製造業では資本金3億円以下または従業員300人以下となっている。国内企業の99・7%を占め、雇用の約7割を担う存在だ。

 基本法は1963年、資金力に劣る中小企業を支援する狙いで制定された。政府はこれまで、中小企業の保護を通じ地域経済の維持を図ってきた。定義変更は大きな政策転換となる可能性がある。

 菅政権は、前政権の経済政策「アベノミクス」を継承する考えを示している。大規模金融緩和がもたらした円安が大企業の業績を押し上げ、株価も上昇したことが成果とされる。

 一方で、まず大企業が潤い、その恩恵が中小企業や労働者にも徐々に及ぶ「トリクルダウン」を目指したが、実現していない。

 コロナ禍の打撃も受け、中小企業の経営は厳しさを増している。ここでさらに淘汰(とうた)を促す改革がどう作用するか。「地方重視」を掲げる菅政権は、政策の方向性をよくよく吟味する必要がある。

(9月24日)

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