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デジタル庁創設 懸案を置き去りにできぬ

 菅義偉首相が「デジタル庁」新設に向けた動きを加速している。

 全閣僚が出席した会議で、準備を急ぐよう指示した。年末までに基本方針をまとめ、年明けの通常国会に関連法案を提出する構えでいる。

 国と地方の情報システムの改善にとどまらず、民間のデジタル化も後押しする「強力な組織」を目指すとしている。

 政府が個人情報の管理を強めることへの国民の不信感は根強い。デジタル格差の広がりも懸念される。利便性だけを強調した“突貫工事”にしてはならない。

 これまでも政府は、繰り返しデジタル化を提唱してきた。

 2001年に「5年以内に世界最先端のIT国家に」との目標を掲げ、13年にも最高水準のIT国家創造を宣言した。施策への電子データ活用を自治体に義務付けた基本法も施行している。

 改革を所管する省庁は複数にまたがる縦割りとなった。住民基本台帳や税の管理システムは統一されず、個人情報の取り扱いが自治体間で異なることもあって、データの共有や広域での利活用がままならなかった。

 今度のコロナ禍では、給付金のオンライン申請でトラブルが続発した。省庁を結ぶテレビ会議が開けず、感染データをファクスで送るなど、時代にそぐわないお粗末な実態があらわになっている。

 菅政権はデジタル庁を司令塔に職員や予算を集約する。国と地方のデータ管理規格を標準化し、教育や医療、各種手続きでオンライン化を図るという。

 既に、政府の個人情報保護委員会が、個人情報の取り扱いを巡る法令を一元化するための議論を始めている。政権は、デジタル化に投資する企業を支援する税制の導入も視野に入れる。

 鍵を握るマイナンバーカードについて、首相は「一気呵成(かせい)に普及を進める」と断言した。運転免許証や国家資格証と統合し、預貯金口座にひも付ける考えだ。

 国が集めた個人情報を管理運営することで、過度な監視社会を招かないか。民主的に制御できる手だては確立していない。

 情報端末を利用できない個人、デジタル投資の余力の乏しい事業者への支援策を欠いては、二極化を招きかねない。

 デジタル化で生活の質はどう高まるのか。どの程度の費用を見込むのか。国民に説明を尽くしながら具体化する必要がある。コロナ禍に乗じて合意形成をなおざりにすることは認められない。

(9月25日)

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