TOP2015年01月防災充実、誘客の鍵 入山規制範囲縮小
新たに設けたシェルターの前で、安全点検した関係者ら。御嶽山麓のスキー場では防災対策が進む=19日午前11時18分、木曽町の開田高原マイアスキー場

 御嶽山の入山規制範囲が昨年9月27日の噴火後に設定された「火口4キロ圏内」から「3キロ圏内」に縮小されることが19日、正式に決まった。火山噴火予知連絡会と気象庁は記者会見で、科学的な評価が理由だと強調したが、地元の防災対応が一定程度進んだことも流れをつくったとみられる。噴火警戒レベルは3が維持され、活動が再び活発化する可能性は残る。山麓の冬季産業の柱であるスキー場にとって安全対策を充実することが誘客の前提となっている。

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 「データを見る限り特別な変化が起きるとは考えにくい」。予知連会長の藤井敏嗣東大名誉教授は記者会見で、活動状況をそう説明。気象庁火山課の北川貞之課長は、縮小を望む地元の声に判断が影響を受けたかどうかについて、「配慮したわけではない」と述べた。

 気象庁によると、噴火の前兆現象として起きることがあり地下のガスや熱水の移動などで生じる火山性微動は、噴火直前から10月6日までほぼ連続して発生したが、11月下旬に4回起きた以外は観測されていない。噴火当日に483回に上った火山性地震も、現在は1日当たり数回〜十数回に減少した。

 予知連はこうした状況から、「昨年9月と同程度ないし上回る規模の噴火が発生する可能性は低くなっている」と指摘。噴石や火砕流が影響する範囲などの見直しを踏まえ、気象庁は警戒範囲は火口3キロ圏内とした。

 一方、同庁は、今回の判断に至るまで、スキー場など地元の防災対策の進展もにらみながら対応を検討してきた経緯も認めている。

 この日、東京・大手町の気象庁で予知連の会合が始まった1時間半後、木曽郡木曽町の県木曽合同庁舎では長野、岐阜両県や地元自治体による「御嶽山火山防災協議会」の会合が並行してスタート。気象庁と連絡を取りながら、新たな入山規制を確認した。

 気象庁はこれまで、警戒範囲の縮小や噴火警戒レベルの引き下げについて、現地の防災対応など「社会的な要素も合わせて考えていく」(火山課)とも説明。この日の気象庁と現地の対応について幹部の1人は、「データの客観的評価が前提だが、今回は地元が熱心に対応して、(縮小への)流れができた」と話した。

 予知連委員の山岡耕春・名古屋大大学院教授は会合終了後、「縮小して良いかどうかの根拠を科学的に十分に裏付けるのは難しい。火山防災協議会の役割を強化するなど、個々の山の状況に応じた対策を国が支援していく必要がある」と話した。

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 木曽郡木曽町の開田高原マイアスキー場では19日、県木曽地方事務所や木曽広域消防本部などが安全点検を行った。昨年9月の御嶽山噴火を受け、火山災害に対応できるマニュアルについて聞き、ゲレンデ上部に設けたシェルター(避難小屋)を確認するなどした。

 同スキー場は、シェルターを含む場内の緊急避難場所4カ所にヘルメットやゴーグルを常備し、避難時の注意点を記した紙を利用者に配っている。運営するアスモグループの今孝志社長は取材に「災害はいつ発生するか分からない。命の重みに今まで以上に敏感になっている。防災訓練などでさらに対策を講じる」と話した。

 今季の営業開始の見通しが立った木曽郡王滝村のスキー場「おんたけ2240」は、マイアスキー場の安全対策に倣って準備を進めている。営業開始までに警報を鳴らすシステムなどを整える。同スキー場を所有する同村の栗空敏之総務課長は「先駆けのマイアスキー場と足並みをそろえたい」と話した。

 両スキー場の具体的な安全対策づくりは、県が、原資となる基金に資金を拠出するなどして支援。2スキー場が合わせて営業できる予定になり、阿部守一知事は19日、「地域の復興に向けて大きな一歩になり得る」と歓迎した。

 2スキー場にどれだけ客が集まるかは、噴火の影響を大きく受けた木曽谷の観光復興に直結する。19日の御嶽山火山防災協議会に出席し、長く御嶽山を研究している東濃地震科学研究所(岐阜県瑞浪市)の木股文昭・副首席主任研究員は「観測や連絡態勢が根本的に変わらず万全とは言えない中で、もう一度、噴火被害があれば木曽は立ち直れない。地元、国と県のさらなる連携が必要」と指摘した。

 県は当面の課題としてスキー場の安全対策と営業再開後の誘客促進を挙げる。「スキー場や村に一義的に対応してもらうが、さまざまな対策や観光振興を進めるに当たり、必要なことを支援する」(山岳高原観光課)との立場。具体的な取り組みが求められている。

2015年1月20日掲載