TOP2019年07月王滝頂上、遺族ら登れる日心待ち 村、9月規制解除へ準備
王滝村が9月の入山規制解除を目指している王滝頂上付近(手前右)。山頂の剣ケ峰(中央奥右)と結ぶ登山道を含めた一帯で多くの犠牲者が出た=26日、御嶽山

 2014年9月の御嶽山噴火災害後、入山が規制されてきた木曽郡王滝村の王滝頂上(2936メートル)まで今秋にも登れるようになることを、村側から入山して噴火に遭った犠牲者の家族や生還者らが心待ちにしている。「同じ景色を見たい」「あの場所で手を合わせたい」。そうした願いをかなえられるからだ。規制解除に向け、村は安全対策などの備えを急ぐが、天候不順にも悩む。

 王滝頂上付近を26日、村などの承諾を得て小型無人機ドローンで上空から撮影した。王滝頂上山荘や御嶽神社の奥社が見え、その奥に山頂の剣ケ峰(3067メートル)が。火口からは白く噴気が上がっていた。同郡木曽町は1日、町側の登山道で剣ケ峰までの入山規制を解除したが、王滝村側の王滝口登山道は安全対策が十分でなく、村は9合目から先の入山規制を続けている。

 「(遺品の)登山靴を履いて王滝口登山道を下り、家の玄関を開けて『ただいま』と言いたい」。愛知県一宮市の会社員所清和さん(57)はそう願う。噴火で次男祐樹さん=当時(26)=とその婚約者丹羽由紀さん=同(24)=を亡くした。2人は村側から登り、下山するところだった。

 遺体は、ともにヘリコプターで麓まで運ばれた。「自分の足で下りていない。(2人の)気持ちは帰ってきていない」。せめて息子の靴を履いて下山することが「一つの区切りになる」と感じている。手元には、王滝頂上北側の八丁ダルミで撮った2人の写真が残る。剣ケ峰には昨年9月、木曽町側から登ったが、「(王滝頂上から)2人が通った八丁ダルミを眺めたい」。

 被災者家族らでつくる「山びこの会」の28日の慰霊登山に同行する予定の鈴木康夫さん(62)=松本市=も、王滝頂上から八丁ダルミに向かって「手を合わせたい」と望む。王滝口登山道を登り、剣ケ峰の手前で噴火に遭遇。仲間3人を失い、自身も左肩骨折などの大けがをした。

 翌日、目を覚ました場所が王滝頂上山荘だった。自力でたどり着いたようだったが、記憶はない。救助されてヘリで下山。「私の登山はまだ完了していない。自分の足で下りたい」とも思っている。

 村は王滝頂上までの入山規制を9月に解除する方針。頂上の冬季避難小屋を防弾チョッキの素材で補強し、鋼鉄製シェルター(退避壕(ごう))の設置も計画する。ただ、資材の荷揚げは天候不順のため進んでいない。村総務課は「3千メートル級の山なので自然現象に左右されるのは想定内」とし、目標通りの工事完了を目指す。

2019年7月27日掲載