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第3回 全国フォト×俳句選手権

グランプリの部

 写真と俳句のコラボレーション作品を競う「信濃紀行 第3回全国フォト×俳句選手権」グランプリの部が10月13、14日、長野県須坂市で開かれました。グランプリに輝いた水戸市の打越栄さんの作品をはじめ、全入賞作24点を紹介します。
 選手権当日は、グランプリの部と新設のファミリー賞の部に、県内外から、前回を上回る計69人が参加。1日目は須坂市内を撮影・吟行し、グランプリの部には計164点が提出されました。2日目は、メーン会場の須坂市シルキーホールで、作者名を明かさず作品のみで公開審査をしました。

※作品の画像をクリックすると拡大表示されます。

グランプリ

打越栄(茨城県水戸市)

審査の方法

 審査は、1人当たりの提出作品数が今回から3点に増えたため、予備審査を導入。審査員の写真家中谷吉隆さん、俳人坊城俊樹さん、川柳作家やすみりえさんの3人が、全164点を30点に絞り込み、作品をスクリーンに映し出す公開の1次審査に臨みました。1次審査では松(5点)、竹(3点)、梅(1点)、残念(0点)の札で採点。上位4点を残した決勝審査であらためて意見交換し、グランプリを決めました。(司会は俳人の神野紗希さん)

決勝審査

〈ジャズ好きの祖母の眼鏡や冬支度〉

【中谷】足踏みのミシンの写真が素晴らしい。句の「ジャズ好き」もハイカラなおばあさんを思わせる。
【坊城】「眼鏡」から針仕事をする姿も見えてくる。
【やすみ】ミシンのシルエットというか光の状態がとてもいいですね。

〈十六夜や思い出の箱そっと見る〉

【中谷】ススキのような草の後ろに明かりを写し込み、月に見立てた。うまい。
【やすみ】「思い出の箱」には大事な人からの手紙でも入っているのでしょうか。句も写真も、いろいろなものを想像させる余白があります。

〈騎馬の民秋風にのり鎧塚〉

【坊城】これ、好きだなあ。「鎧塚」(須坂市にある積石塚古墳)といっているのに、塚ではなく、「賽の河原」のようにも見える。
【中谷】確かに石積みの面白さがあるね。
【坊城】「騎馬の民」の無常感が積み重なっている感じがする。

〈空耳の下校放送秋つばめ〉

【坊城】いかにも下校放送が流れそうな屋根。「秋つばめ」の季語も効いている。
【中谷】ただ、写真はちょっと弱いかも。もうひとひねりあれば。
【やすみ】私は写真のナチュラルな雰囲気がいいと思いました。
【神野】それでは、そろそろグランプリを決めていただきたいのですが。
【やすみ】私は「十六夜」を推します。言葉や絵柄で表現されていないもう一つのシーンが浮かび上がってくるような魅力があります。
【坊城】私は「空耳」。ただ、中谷さんに「写真が…」と言われ、心を痛めているところです。どうしてもなら「鎧塚」を推したい。
【中谷】私は「ジャズ」。2番目が「鎧塚」。
【神野】分かれましたねえ… それでは、もう一度、松竹梅の札を挙げて、参考にしてはどうでしょう。
〈ジャズ好きの〉=松梅梅(7点)
〈十六夜や〉=松竹梅(9点)
〈騎馬の民〉=松松竹(13点)
〈空耳の〉=松竹梅(9点)
【やすみ】答えは出た気がしますね。
【坊城】ご当地という意味も含めて、私は異議なしとします。
【中谷】私も。
【神野】それでは、「騎馬の民」がグランプリに決定しました。



準グランプリ

杉本裕(長野県山ノ内町)

宍戸安子(広島県広島市)

倉田有希(東京都渋谷区)



審査員特別賞

田中清(長野県松本市)

仲俣一重(長野県飯綱町)

浅田季祐(埼玉県ふじみ野市)



フレッシュ賞

溝口桃子(長野県伊那市)



フォトコン賞

佐藤幸男(長野県塩尻市)



優秀賞

村松伸一(長野県長野市)

村山要(東京都文京区)

須川久恵(東京都世田谷区)

田中保(長野県須坂市)

溝口祐子(長野県伊那市)



入選

名久井苑生(埼玉県嵐山町)

伝田忠三(長野県長野市)

川崎彰典(埼玉県美里町)

田中賢一(長野県須坂市)

土屋春雄(長野県御代田町)

金田孝(長野県飯田市)

飯野佳代子(埼玉県美里町)

西村美枝(長野県長野市)

藤本知之(広島県広島市)

根笹貴之(長野県佐久市)



全国公募の部

 全国公募の部には、全国から225人、計621点の応募がありました。応募作品数は、昨年の2倍に迫り、このうち、高校生以下の作品は、前回の3倍余の92点に上りました。
 選考会は8月29日に都内で開き、作者の氏名や居住地をふせて、作品のみで審査。写真家の中谷吉隆さんと俳人の坊城俊樹さんが、全作品の中から、優秀賞3点、入選12点、佳作28点を決め、俳人の神野紗希さんが、高校生以下の作品から、フレッシュ賞(高校生以下)1点とジュニア賞(中学生以下)1点、入選2点、佳作6点を選びました。

 ※優秀賞、入選、フレッシュ賞、ジュニア賞の作品は画像をクリックすると拡大表示されます。

一般の部

優秀賞

田中 克佳 滋賀県大津市

西村 美枝 長野県長野市

金田 孝 長野県飯田市



入選

西村 明倫 長野県長野市

酒井 和平 石川県金沢市

秋山輝一 東京都世田谷区

滝沢康幸 長野県須坂市

須川 久恵 東京都世田谷区

床井 和夫 栃木県宇都宮市

川崎彰典 埼玉県美里町

大橋志ほこ 栃木県さくら市

土屋春雄 長野県御代田町

中本 久美子 兵庫県神戸市

溝口 祐子 長野県伊那市

村山 要 東京都文京区



佳作

宗沢 美子 福岡県芦屋町

倉田有希 東京都渋谷区

飯野佳代子 埼玉県美里町

酒井 綾美 長野県泰阜村

打越栄 茨城県水戸市

板津松男 山梨県都留市

福岡育代 東京都北区

杉本 裕 長野県山ノ内町

奥野喜久雄 愛知県名古屋市

外谷 稔 長野県長野市

永田 龍也 長野県茅野市

松林和生 兵庫県西宮市

藤本知之 広島県広島市

佐藤 幸男 長野県塩尻市

高木弘子 長野県岡谷市

黒沢信幸 長野県安曇野市

西山 寿男 神奈川県相模原市

宍戸安子 広島県広島市

村松伸一 長野県長野市

五味竹子 長野県長野市

白鳥寛山 長野県長野市

若林 陽光 北海道札幌市

米長 時正 北海道釧路市

多田 檀 大阪府高槻市

岡部佑美子 兵庫県西宮市

仁井田 梢 東京都大島町

荻原 宏祐 長野県長野市

小田中 準一 千葉県市川市

高校生以下の部

フレッシュ賞(高校生以下)

片井 優花 静岡県静岡市

ジュニア賞(中学生以下)

植原和 東京都立川市

入選

溝口 開人 長野県伊那市

辻本 敬之 奈良県奈良市

佳作

上條美喜 長野県山形村

溝口 桃子 長野県伊那市

小林彩紀 長野県長野市

高橋快宗 広島県福 山市

仲里 栄樹 沖縄県西原町

立花和大 埼玉県鶴ヶ島市


審査員の講評と感想

中谷吉隆さん(写真家)

 第3回の全国公募の部は、応募人数、応募作品数ともに、昨年を大幅に上回り、応募者の地域も、北海道から沖縄県まで広範にわたり、まさに「全国選手権」にふさわしいものとなった。
一般、高校生以下の入賞者(それぞれ43点、10点)を決定したが、過去2回と比べると、大幅に、「フォト×俳句」による表現の多様性、豊かさが見られ、内容の充実ぶりは目を見張るものだった。
無季句や、滑稽味を狙うあまり駄じゃれ的になったり、説明調から抜けきらぬものもあったが、写真の表現性や俳句の詠みの深さ、そして確かな、また面白いコラボレーションが研究された作品に数多く出合えて良かった。
入賞を果たした計53作品のうち、半数以上が新しい顔ぶれによるもので、この結果には驚いた。静かにだが、「フォト×俳句」が全国的に浸透してきたことを実感できるもので、これは大きな収穫である。

坊城俊樹さん(俳人)

 3回目の全国フォト×俳句選手権を迎えるにあたって、全国公募の部には、620を超える作品が寄せられた。その多くが、今までに増して質の高いものであったことを誇りに思う。同時にそれは、作者の皆さんが「フォト×俳句」の意味と醍醐味をご理解いただいた証左でもあろう。
特に、今回採らせていただいた、高校生以下の10作品を含む53作品の質の高さには驚いている。どれも写真と俳句の「付かず離れず」の原則が守られ、写真はむろんのこと、俳句の質も過去のものよりはるかに上達されたことである。
俳人としても、かなり「季語」の重要性には気を配ったつもりであり、それなりの俳句の完成度も視野に入れて選考した。結果は、作品をご覧いただいた上で、受け手の皆様の琴線にいかに触れるか、大きな楽しみとなった。10月の選手権はいよいよ、他に類を見ない、写真と俳句の絵巻物の展覧会となりそうである。

神野紗希さん(俳人)

 高校生以下の作品は、いずれも、自分の日常の「ナマな部分」を写真で切りだし、自分の心の深いところから言葉をつむいでいましたね。作品をつくるということは、自分だけが知っている大切な出来事や思いを、宝物のように読者に差し出すこと。今回はたくさんの宝物を見せてもらい、うれしかったです。
 フレッシュ賞は、春の情緒あふれる作品。梅の花に水滴が付いている写真をよく見ると、水滴には梅の木が映っています。俳句は、春雨が降る中、家路をとぼとぼ歩いているという内容です。うつむいているのは心に愁いがあるからでしょう。水滴に閉じ込められた梅の木が、自分の世界にこもった作者の心のように思えてきます。

 ジュニア賞は楽しい作品。いつもは会社に行くためひげを剃るパパも、夏休みの間はサボって無精ひげを生やしているという俳句です。「ひげをそらないパパの顔」と、顔に焦点を絞って表現したことで、パパのくつろいだ表情が見えてきます。さて、パパはどんな表情? 下がり眉にホッとさせられて、思わず選びました。