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実践講座① 伝えたいことを明確に

今回から3カ月に1回、選者の写真家中谷吉隆さんと俳人坊城俊樹さんによる対談形式の実践講座を掲載します。「あと一歩」の投稿作品を中心に、2人がレベルアップのポイントを解説。写真と俳句の腕を上げ、入選を目指しましょう。

【中谷】 私は選考する時、先に写真を見てイメージを膨らませ、どんな句か思い浮かべてから、句を見ている。だから、まったくイメージが広がらない写真は駄目。句を見た時に「えっ、この写真からこういう句を付けたのか」というような、想像を超える驚きがほしい。

【坊城】 私も最近は、先に写真に目がいっちゃう。以前は俳句を先に作って、後から写真を付けていたが、その作り方は難しいと分かってきたので、先に写真を撮っている。いい写真の作品があると、お願いだからいい句が付いていてと思う。

【中谷】 こんな情景があるとか、人間がやることは不思議だねとか、伝えたいことが、まずは写真だけで明確になるように切り取ってほしい。写真が物語っていないと、フォト×俳句としてもいい作品にならない。

【坊城】 俳句も、何を言いたいかをはっきりさせて作ることが大事。季語は、入れておけばいいでなく、季節の言葉として有効に使ってほしい。「おじさんが寒い話をしているよ」では、「寒い」は季語の役目を果たさず、季語のようなものでしかない。

   ◆

20120126a.jpg<文化祭終わりを告げる大花火>
   (長野市・北山省三さん)


【坊城】 余韻のあるいい写真。菊が怖い。普通の菊の艶やかさを持っていながら、死にゆく菊の雰囲気を持っている。

【中谷】 写真はとてもいい。菊が捨てられている感じ、この物量感や色合いは面白い。菊が集まったこの形が大花火に見える。

【坊城】 句が残念。「文化祭」で作りたかったのか、「大花火」で作りたかったのかが分からない。両方が季語なので、どちらかを削ってほしかった。「文化祭」は「生徒らへ」でも良かったかも。惜しかった。上手になる可能性が感じられる。

   ◆

20120126b.jpg<起重機もフル活動の師走かな>
   (御代田町・土屋春雄さん)


【中谷】 写真と俳句(の内容)が付きすぎている。写真が撮れたので、句を付けたと思うが、写真に縛られすぎ。

【坊城】 この光景の思い出だけ残して、一度写真から離れ、句は、別の日時に作ってみては。それか、起重機が浅間山を引っ張っているという感じの句にしてはどうかな。

【中谷】 それなら、飛躍していて面白いね。浅間山でもいいし、雪雲をつり上げてもいい。

   ◆

20120126c.jpg<秋風や子供神輿(みこし)がはしゃいでる>
   (長野市・雪うさぎさん)


【中谷】 きのこを擬人化したが、写真はもう一工夫が必要。神輿に見えるように、一つきれいなきのこが入っているか、どこかを盛り上がらせて写すといい。

【坊城】 季語の「秋風」のイメージと「はしゃぐ」が合わない感じを受けるが、句は悪くない。


(2012年1月26日掲載)
 ※「実践講座」は概ね3カ月に一回載せます。



【選者略歴】

中谷 吉隆(なかたに・よしたか)さん
写真家。1937年、広島市生まれ。ルポルタージュやスポーツなどの分野で活躍。写真コンテストの審査員も多数務める。日本写真家協会名誉会員。作品集に「ノーサイドの笛が鳴る」「神楽坂Story」など。東京在住。


坊城 俊樹(ぼうじょう・としき)さん
俳人。1957年、東京生まれ。俳誌「花鳥」主宰。日本伝統俳句協会常務理事・事務局長。曾祖父は高浜虚子。著書に句集「あめふらし」、「坊城俊樹の空飛ぶ俳句教室」など。東京在住。


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