TOP2011年09月しゃれた作りの『信州蕎麦ごのみ』 自分の好みがわかるかも

 信毎から最近出版された『信州蕎麦ごのみ』。

 県下全域のそば屋105店が紹介されています。基本的には"選ばれたそば屋"ということになりましょうか。だれが選び、選んだ基準は何だろうか、と気になりますが...。それは明らかにされていません。基本的には著者と周辺の人たちが選んだ店でしょう。

 当然のことですが、あら、あんな店が入っているの、とけなしたくなる店があり、どうしてあの店が入っていないのかしら、とけげんに思うこともあります。だれが作っても、出てくる話です。

 それこそ「そば好み」です、人により好き嫌いがあって、どの店を選ぶかはそれぞれ違ってきます。

 それで、目次に最初に並ぶのが「モダンなそば屋」。どことなく、本書の方向性を示しているように感じました。

 続いて「古民家のそば屋」「そば酒」「絶景に立つそば屋」「そば会席」「家族そば」と並びます。傾向とすれば、細打ちで辛い汁、のど越しのよいつるりとした蕎麦を推奨するのかしら、と見えました。もちろん、違う性格の店も多く含まれていますので、一概には言えませんが。

 著者の山口美緒さんは1978年生まれ。蕎麦の食べ歩き、そば屋の紹介に若い女性が参加するのは珍しく、そのフレッシュな感性をこれからも大いに発揮して欲しいところです。

 つまりは、そば談義は長いこと中年以上の男の特権、のように言われてきました。それが客層の変化を反映して、若い人、また女性層でも大いに議論されるようになって。頼もしい限りです。

 この本も全体としては若い人向け、女性向けに出来ているように見えます。しゃれたセンスの現代風の作り。この世界に新風を吹き込んでいます。

     ☆

 私も「信州そば百選」などを編集したことがあります。こうした企画には、せっかく選んだ、推奨する店が、都合により紹介出来なかった例がありました。今回のこの本も当然、そうした性格があったことと思います。

 つまりは、こうした「おいしい店」をどうやって紹介しても、載せきれないのは明らかです。まだまだ隠れた美味しい店があるんだよ、と、読者はきっと、自分だけが知る「隠し玉」を持っていることでしょう。そんな「隠し玉」の楽しさは、こうした本があることで倍増するような気がします。

 信州のそば屋は今、相当な人気を博しているのではないかと私はにらんでいます。そして全国的にも、それなりに健闘しているのでは、とも感じています。

 しかしなぜか、蕎麦を扱った雑誌や単行本は、あまり売れていないようです。食べるのと読むのとでは違う場面なのでしょうか。あるいは、店を探すのには、本よりもインターネットで、そして口コミが、今でもいちばん有効なのかもしれません...。

 そんな中で、信州ではそれなりにがんばって出版が続いています。取り上げるそば屋の数も、100だったり300だったり。1年とか2年たつと消える店、新規開店の有望株も続出します。絶えず店を追いかけるのはたいへんな作業。本書は、長く愛されるようなロングセラーになるといいですね。

 この本に登場するそば屋で、私が入ったことのない店は3分の1くらいにのぼります。好みもありますので全部をとは言いませんが、この本を参考に、これからもせっせと食べ歩きを楽しみたいと思っています。皆さんも、何かを基準にしていくつか食べ歩きをしてみると、自分の「好み」がわかって来る場合があります。信州には、たくさん美味しい店があります。大いに楽しみましょう。

2011年9月 5日掲載

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