TOP2012年04月蕎麦より花か 桜の季節に

 今年の冬は寒かった。全国的だったといいます。そのせいで、梅から杏、桃、桜などの開花がずいぶん遅れたようです。

 それでも4月10日ころになると、信州も南の方から「咲いた」という知らせが届くようになりました。ようやくお花見のシーズンになったかと、心が浮き立ちます。

 陽気と花にひかれて、8日の日曜日に飯田市も南の方の天竜峡へ出かけました。桜はちょうど見ごろ。マラソンなどのイベントが行なわれていて、大にぎわいでした。

 そんな中で「そば祭り」も開かれていました。しかし皆さんどことなく、蕎麦より桜、の雰囲気が濃いように見えました。

 飯田の帰りに、伊那市高遠の桜(タカトオコヒガンザクラ)はいかがか、と寄ってみました。まだ開花宣言が出ていないのに、観光客が殺到しているのには感心しました。

 夕方4時ころに行ったのですが、観光バスは何十台もぎっしり停車中。乗用車の有料駐車場(1日700円)も大にぎわい。この時間になっても料金割引きが無いとは、さすがの超有名観光地、と思いました。どこかで蕎麦のイベントがあるやに聞いていたので、係員にたずねてみたのですが、不明です。あきらめて通り過ぎました。どことなく、蕎麦より花(咲いていなくても)の雰囲気をここでも感じました。

 この近くでは、高遠より一段と奥へ入った長谷(旧長谷村)では、道の駅で地元の蕎麦が食べられるイベントがあると聞きましたが、これも知られていないようです。じっさいは分杭峠のパワースポットブームもあって、たぶん、にぎわっていることでしょうが。

 帰路、中途半端な時間だったのに、開いている店があったので飛び込みました。伊那市でも諏訪でも、妙に固い蕎麦が出てきてびっくりしました。「固い蕎麦」は東京でも北信濃でも経験しましたが、一種の流行現象なのでしょうか。こんな田舎にもご時勢で伝染してきたのかもしれません。

 それはともかく、何軒も食べ歩いた店で、どこでも、ツユ(汁)が猪口に盛り切りで出されたのには驚きました。信州各地で、特に観光地で広がっている風習です。蕎麦を食べる時にも、そば湯を使う時にも、これは困るなあ、と思ったものです。こんなことをしていると、信州そばの名を落とすことになるのでは、と心配になりました。

(言うまでもなくツユは、徳利など別の器に入れて出すのが正常です。食べる人が自分で猪口に注ぎ、好みで調整するのが、具合がいいのです。塩分を減らす努力をしている人が増えている世の中ですから、摂取する塩分まで強制するような出し方は気をつけた方がいいのですが...。)

 いずれにしろ、桜の花が咲いたのに合わせて心が浮き立つからか、蕎麦の味については皆さん、気持ちがのっていないようです。花より団子の逆で、蕎麦より花、が広まっているようでした。

 東京・上野のそば屋で以前、「桜そば」なるピンク色の蕎麦を食べたことがありました。公園の開花に合わせて出しているようです。味はともかく、その華やかな色あいに、季節感がこもっていて楽しかったのを思い出しました。

 信州にはなぜか、乾麺や生麺の「桜そば」はいくつもあるようです。それでも桜の季節に、花を愛でながら手打ちのピンクの蕎麦なんぞを食べてみたいもの。そうした工夫は、信州ではあまり見られないようです。

 味に自信が無かったら(いや、失礼。自信があっても)、食べる楽しみを増やすための工夫を、もっと考えてくれるとうれしいなあ、と思ったものです。

2012年4月20日掲載

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