TOP2012年06月アサツキ再考 季節感ある地元らしい薬味を

 6月初めに、長野市内のそば屋で、薬味としてか、アサツキの玉が出ました。珍しい。以前にも別のそば屋で出てきて感心したことがありました。興味深い現象かもしれませんが、今でも特別に流行するという雰囲気はないようです。

 アサツキはこの時期は地上の葉が枯れてきていて、そのうちにどこに生えていたかがわからなくなります。今のうちに地中の玉を掘り上げて、軽く洗って乾燥させておく。食べる時には茶色の薄皮をはいで、味噌をつけてかじる。お酒のツマミに喜ばれるといいます。

 蕎麦の薬味のように使われる時も、小皿に数粒の玉があり、たいがいは味噌をちょっとだけつけてかじります。

 早い時期のアサツキは、青い茎(葉)も含めて細長いものを1本とか2本、料理に上品に添える場合が多いようです。球根がだんだん丸みを帯びてくると、少し辛味が増して、特有の香りもきつくなります。そんなタイミングの味を好む人も多いようです。もう枯れた状態(「夏眠」なのでしょう)になると、少し旨味が強くなります。辛味は強く感じる場合と、弱くなる場合もあるようです。9月を迎えると、少し青みがついてきて、辛さがきつくなります。玉の薬味の役割はそろそろお終いです。

 この食べ方は、長野県では北の飯山市あたりが本場でしょう。地続きの新潟県十日町などでも盛んです。あちらのそば屋でも体験したことがありました。どちらかといえば新潟県の方が広く利用されているようです。あちらでは「アサヅキ」とも呼びます。古くから親しまれてきた作物、そして食べ方なのでしょう。

 基本的には雪深い地方の文化です。長野県北部の信濃町や白馬村、小谷村でも見かけます。シーズンものと言えますが、時々、道の駅や直売所などで売られているのを見かけます。

 今の時期は、だんだん暑くなってきて、そろそろ薬味のネギの味が少しずつ落ちてきています。ネギは、いろいろ工夫して、みじん切りにする店、水でさらして嫌みを減らす職人、など対応はさまざまで。いや、何も対策をとらない店もけっこうあります。

 大葉(青ジソ)、ミョウガなど、夏にはいかにもの季節らしい薬味が登場することがあります。地域的な特色も含めて、楽しい、美味しい薬味がいくつもあるとうれしいものです。

 アサツキの特色は、よろしかったら使って下さい、と添えるところ。もともと薬味とは、そういう性格を持っているはずです。好み、地域的な文化によっても違いが出てきますが。

 そこへいくと、クルミなんかは信州らしくていいものです。あるいは、ゴマ、エゴマ(イクサ)なんかも...。これらはもともとは「油料作物」として親しまれてきた伝統があります。そしてツユの味を美味しく変化させる役割を担うのでしょう。薬味のような気もしますが、位置づけはまだ定まっていないようです。

 願わくは、薬味にしろクルミのような油料作物の添加にしろ、蕎麦の不味さを隠すための味つけでなく、蕎麦が美味しい、ツユも薬味も特色があっていい、となればうれしいのですが。

2012年6月10日掲載

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