TOP2012年10月9回目の松本そば祭り 形も味も「そば屋事情」を反映して

 先日、10月6日~8日に開かれた「松本そば祭り」を、今年ものぞいてきました。

 この祭りも今年で9回目だそうです。毎年、相当な観客を集めて盛大に催しています。そろそろ、松本の秋の風物詩として定着してきたような気がします。一方で、いくらか陰りも出てきたかしらという印象を持った、今回のイベントでした。

 蕎麦の出店は18ブース。去年が28店ほどだったから、だいぶ減ったことになります。蕎麦以外の売店なども数はだいぶ減っていました。会場の都合で少し狭くなったことも影響しているのでしょう。他の要素についてはよくわかりません。

 県内と県外の半数ほどの店を食べ歩きました。その簡単な感想は、以下のようです。

 いくつかの店で聞きましたが、多くは北海道の新そばを使っています、という答えです。今年の地元の出来については、収穫がこれからですのでまだわかりません、という返事。地元らしい情報が、ほとんど聞けませんでした。これからあるイベント、地域のそば屋の様子、名物メニューなど、地域紹介もあまり目立ちません。どことなく、この場でたくさん売ることが目標かしら、と感じました。

 売るだけでなく、地域や産物の紹介を上手にやってこそ、遠方からの参加なのだといつも思うのですが。愛好家がグループで参加するのは、採算を度外視しているのでしょう。個別の店、個人が開くブースで、宣伝だけでなく儲けるところまでがんばるのは、たいへんな努力がいるのだろうとは思いました。

 北海道のブースは、さすがに地元の「新そば」らしい味になっていました。他と比べて材料の良さがよくわかります。しかし、2回目に食べた時は、1回目より少し味がよくない。会期中でも変化があるようでした。

 最初、今年は味はなかなかいいなあ、と思っていたら、2回目に訪れた時には、かなり落ちているような気がして残念でした。特に、松本の地元、さらに近辺の土地やグループで出した店が味がイマイチなのにがっかりしました。

 観光客はたくさん訪れて、イベント全体としては「成功」なのでしょう。最終日の夕方には、「完売」の札が多く見られました。店を出した関係者も、満足したように見えました。

 後で考えて。これだけ盛んなイベントなのに、私の松本の知り合いが、ほとんど行かないのにはびっくりします。1度行ったからいいや、という人が多いのですが。また、何度も通って、味にがっかりして、もう行かない、という知人も居ます。どことなく、あのイベントは味を楽しむ場ではない、という気配を感じます。

 それは仕方ないのですが、そば祭りの味が松本の蕎麦のレベルだと思われたら困ると思うのです。去年の「おひさま」の蕎麦のシーンを思い出して、松本の蕎麦のレベルはあの程度、と見くびられるのは困ります...。

     ☆

 そんなこんなの感想をぶつぶつ繰り返しながら食べ歩いたものでした。そのうちの断片的な印象のいくつかです。

 店員や調理場の係員の顔が不機嫌だと、蕎麦の味も落ちるような気がしました。結局は作る人、提供する人の気持ちが味に反映するのでしょう、きっと。いくつかの店で見かけたものでした。

 去年より明らかに味が悪くなった店があり、一方で行列が長く人気があるらしいのに美味しいとは言えない、と思った店もありました。

 店の人に話を聞くチャンスがあまり無かったのが残念でした。声をかけてもちゃんとした返事がない店が多い。商売熱心はわかりますが、客との交流、また客から学ぶ姿勢がほとんど感じられず、淋しい思いをしました。

 日がカンカン照る下でそば打ちの実演をするブースが、相変わらず目立ちます。一般のそば屋であれば、こんなオープンな場で打つことはほとんどありません。こうした見せ物は、結局、蕎麦の姿、形を重んじるだけのパフォーマンスで、味のためにはならないはず。いかにも客寄せだけの見せ物のような気がします。この見せ物があって人気を博すブースも多かったのですが。素人名人戦のように、形を作る技術だけが発達する傾向を感じます。

     ☆

 それでもと思って後日、「新そば」の幟にひかれて入った長野市近辺のいくつかのそば屋で、どうも味が冴えない店が多くて参りました。北海道の新そばを使っています、というのに、ちっとも新そばらしくない味が目立つのです。

 こうして、長野市でも松本市でも、そして全国でも似たような傾向なのか、と奇妙な印象を持ってしまいました。松本そば祭りは結果的に、現在のそば屋事情を大きく反映しているのかなあ、と思った次第です。

2012年10月18日掲載

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