TOP2013年01月「そば離れ」が気になる... 今年の傾向はどうか

 謹賀新年。今年も「信州そば漫録」をよろしくお願いいたします。

 師走から新年にかけて、長野市内や近郊のそば屋のいくつかを食べ歩きました。この時期はマスコミなどでも蕎麦の話題が特別に多く、年越しそばや初詣での折に食べるなど、客もそば屋も少し浮かれているような気分です。それはそれで、楽しいのですが。

 そのせいか、蕎麦の味が一定しないような、昨年の信州そばの地粉の豊作が、少しあやうい気がしたものでした。

 確かに、そば屋によっては、例年にないいい味を継続している店もいくつかあります。自分で玄ソバを仕入れて製粉をする店は、いい材料を集めたのでしょう。

 また粉屋から供給を受けている店でも、ふだんのつきあいも含めて、粉屋との良好な関係を保っているらしい様子がうかがえる味も見かけます。いつでも真面目にいい味を出していて、技術や目利きが粉屋から一定の評価を受けているのだろうな、とわかる場合もあります。

 一方で、相当に有名であっても、ジワジワと味を落としてきて、どことなく陰りが見えてきた店、というのもあります。東北信や中信の方で経験しました。

 こうやって、せっかくの信州の「豊作型の旨いそば」の好機に、「そば離れ」をみずから招いてしまう店が目立つのは残念です。

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 昨年の特徴的な動きから推測して、今年の傾向はどうでしょうか。

 全国的には、総選挙によって農業政策の変化がどう現われてくるのか、まだよくわかりません。

 前の政権の「戸別所得補償制度」がようやく定着してきて、ソバの栽培面積が増えたことは喜ばしいこと。これが新政権になって制度が変更されると、農家の栽培意欲にも影響しそうで、気がかりです。

 信州では「タチアカネ」などの新品種の普及・実用化が進むことでしょう。それでも昨年の豊作型が、従来の一般の在来種「信濃1号」で達成されてしまうと、新品種普及の勢いが殺がれるかもしれません。そうした動向も気になります。

 豊作になって玄ソバの価格が下落した、というニュースもショックでした。がんばって量を確保し、それが美味しいのであれば大歓迎すべきなのに、買い叩かれてしまった、というのは農家にとっては生産意欲を失うことになります。そうしたぎくしゃくした動きが、逆にプラスに働くといいのですが。

 昨年の新そば祭りのいくつかで経験した、こんなに美味しいのにお客さんが減っているな、と思った「そば離れ」の実情は、今年はどうなるのでしょうか。もしかしたら、「去年美味しかったから」と、再訪するお客さんが増えるといいのですが。

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 昨秋にたまたま手に入った、県内の遠方のいくつかの乾麺。中には久しぶりに昔の名品を思い出したもの、村起こしの声援で大々的に騒がれたものもありました。年越しなどで家で食べてみて、ちっとも美味しくないのにがっかりしたものです。乾麺や生麺の世界でも、ぜひ、味の向上に踏ん張って欲しいものです。

 美味しい蕎麦をたくさん提供して、信州そばファンを増やすのは大事なこと。それには地元の県民全体が、味を含めて、盛り上げていく努力が必要でしょう。パフォーマンス中心の、目立つ動きに振りまわされることなく、地道に味の向上を目指して欲しいと願います。

 信州全体で、もっと味の向上をはからないと、と年の初めに強く思いました。

2013年1月16日掲載

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