TOP2014年11月産地間競争? 中信地方の各種イベントから

 10月11日の「松本そば祭り」をのぞいてきた。もう11回目だという、秋の松本の名物イベントとしてすっかり定着している。観客は家族連れや若い世代も多く、多彩だった。外国人も目立った。

 一方ではややマンネリ化した要素もあるかと感じた。観客の数が、少し減ったか?と思ったが、どうなのか...。

 祭りのメインは「全国そば祭りゾーン」で、18軒の出店があった。がんばって7軒を食べ歩いたが、それなりに面白い体験も出来た。

 全国と銘打つだけあって、県外からの出店は東京から3軒、北海道や九州からも見えて、12店。かなり広い範囲の参加があったと言えよう。長野県内からは6店。そのうち松本地方が4店あった。

 こうした催しでは、やはり各地の名物そばを食べ歩くのが楽しい。長い行列に並んで待つ間に、前後の客とおしゃべりし、情報交換などしても面白い。
 例を上げれば―
  ○福井県の「越前おろしそば」  ...関西風の味で、今年はなかなかだった。
  ○福島県の「会津高遠そば」   ...信州ゆかりをうたう、あまり辛くない大根汁で。
  ○兵庫県の「出石皿そば」    ...やはり信州・上田から伝わったという。
  ○富山県の「やつおそば大楽」  ...富山湾の白えび天ざるが人気。
 今回は全部を味わったわけではないが、以前の経験も含めて、それぞれ特徴的な味わいだったと言えようか。

 気になったのが、各地のソバの出来ぐあい。北海道は8月の大雨で産地がだいぶ減収になったと当時は報じられたが、その後の状況は伝わってこない。出店者に聞いてみたが、あまりすっきりした返事ではなかった。九州からの店では、これから刈り入れなのでまだわかりません、という。別の産地では、相当に悪い、と聞いた。あるいはよく出来た地域と悪かった地域が混じっている、と教えてくれた県もあった。総じて、量も質も、あまりよくはないようだった。

     ☆

 これより1カ月ほど前、9月13日に、塩尻市で開かれた「北緯36度線そばサミットin長野」。名前からして特色のある催しだった。北緯36度線に近い地域が合同で蕎麦に関する意見交換をする場、ということらしい。福井県、岐阜県、長野県、群馬県、埼玉県、茨城県の関係者が集まった。

 内容はいくつもの講演、パネルディスカッションが中心だ。各地の報告も多かった。各県ではきちんとした取り組みがなされているようで、それなりに参考になった。とはいえ、地域に根ざした蕎麦文化の香りが、あまり聞こえてこない、パンフ類を並べてみても宣伝が上手ではない...。

 全体としては、真面目に蕎麦を問う・議論する、ある意味では珍しい催しだった。一方で、これからの動向を推測すると、本来の信州ゆかりの蕎麦、伝統の味がどうなるのかが気になった。新しい方向ばかり見ていて、足元の文化を見失う恐れもあるのではないかと危惧した。

 サミットの会場は塩尻市役所隣のレザンホール。塩尻市はそば切り発祥の地と古い文献に書かれた本山宿があり、近年はそば屋も増えて、蕎麦はワインと並んで名物に育ちつつある。中山道の宿場がよく残る奈良井宿では以前から蕎麦は名物だった。そば切り発祥の地をうたう本山も、しだいに名声を認められてきた。当日に塩尻市内で見かけた、咲きそろったソバ畑。どこも出来がいいように見受けた。

 とはいえ、まだ塩尻らしい名物メニューが物足りない。中山道以来の伝統の味が聞こえてこない。蕎麦だったら遠くの客を引きつけることが出来るはず。地域の活性化のためにも、もう一ふんばり欲しいものと思った。

     ☆

 塩尻市では、10月25~26日には第2回の「信州塩尻そば切り物語」というイベントが開かれた。平出遺跡公園が会場で、大勢の観客でにぎわった。県の試験場で開発した「ひすいそば」が提供され、人気を博していた。私も食べてみたが、昨年産の各地のものと比べて、これぞ「ひすいそば」という味わいを体験できてうれしかった。中山道以来の歴史と伝統があるのだから、本格的な蕎麦を味わえる機会として成長していって欲しいと願う。

 あと、これからの催しでは、11月15~16日に安曇野市で第2回の「信州安曇野新そばと食の感謝祭」が開かれる。比較的大規模なイベントだが、まだ蕎麦そのものを味わうチャンスになるかどうか、よくわからない。

 こうして、中信地方では各地で独特なイベントが開かれる。新興産地、また消費地としてどういう方向へ進むのか、注目したい。そして長野県全体に、産地間競争のようにいい刺激剤として美味しい味の追求が広がると面白い、と思う。

2014年11月 5日掲載

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