TOP2015年02月半ざる・半そばが400円 長野灯明まつりの門前そば屋

 「第12回長野灯明まつり」に合わせて、長野市では恒例の「門前そば屋の そば食いねえ」が開催されている。今年は2月7日から15日までの間。そば屋12店を食べ歩き、スタンプを集めると数によって割引きが受けられる、景品がもらえるなどの特典つき。

 夕方5時半以降には「半ざるそば」「半かけそば」があり、400円という金額で食べられる、数を稼ぐには集中して食べ歩きするといい、というイベント。店によって違う県内の地酒を置いてあって、飲みながらの食べ歩きもどうぞ、と誘っている。

 半ざる・半かけが400円になったというのはびっくりした。去年までは300円だったのだが。他にも、以前は12店全部をまわると風呂敷などの景品がもらえる、となっていたのを、今年は9店まわると特製のそば猪口・薬味皿がもらえる、とした。早めに、と初日に全部まわってしまった、という人も見かけた、大したものだ。

     ☆

 せっかくの機会だからと、私も懸命に食べ歩いてみた。半ざるで毎夕6軒ずつ、2日で一応は全部をまわったことになる。数をこなすのはお腹に苦しいのだが、早めに皆さんにお伝えしようと、がんばった。その感想のいくつか―。

 今回400円になった理由の1つが、半ざるの元になる「ざるそば」かしら、と各店のメニューを注意して見ると、たいがいの店の「ざるそば」が、800円前後になっている。去年4月の消費税アップの影響で、多くのそば屋が値上げしたらしい。この価格の設定が、ピンとこなかった。

 まわっていて、各店に共通しているのかと思ったのは、先に汁の入ったそば猪口と薬味皿がセットでポンと机に置かれる店が多かったこと。どこかさびしいテーブルに見えて仕方なかった。いつもの「ざるそば」とは違って、徳利に入った汁ではない、盛り切りで、余ろうが足りなかろうが、これきりですよ、という気分だ。後からそば湯を出す店もあったが、扱いにくいこと、おびただしい。猪口に大量に余った塩っぱいツユを、薬味皿にこぼして減らして使ったが、客にとっても店にとっても不快だ。もっとも、黙ってそば湯を出さない店の方が多かったが。

 こうした点では、どこか、本気で蕎麦を味わって下さい、という姿勢が抜けているように感じた。つまりは、余り歓迎しないお客さんだ、という店側の態度に見えた...。寒い中を歩きまわっていて、熱いお茶が一口欲しいところだが、お茶も出さない店があって、すごい略式サービスだなあ、と感じいったものである。

 蕎麦の味については、半分ほどが味に満足できないなあ、と思った。そして、いかにもの機械打ちの蕎麦の味が目立った。材料も製造技術も物足りない。しかし作る側が慣れてしまって、そのまま商売しているのか、と勘ぐる。表の看板には「手打ち」と書いてある店がほとんどなのだが。だから、交互に蕎麦らしい味に出会って、ああよかった、と安心することも。どうしてこういうことになるのか、私にはよくわからなかった。

 善光寺門前といえば、観光客がたくさん利用する。ふだんは地元の客は少ないのだろう。そうしたことを背景に、その場限りの味、ということで県外の観光客に馬鹿にされないか、気がかりだ。

     ☆

 1枚(杯)400円くらいの蕎麦というのはどういうものか、つい比較したくなって、市内の店をいくつか食べてみた。

 ある立ち食いそばの店へ行くと、なぜか「ざるそば」を扱っていない。そうか、寒い季節は冷たい蕎麦はやっていないんだ。それで、最近増えてきた「セルフ式」のそば屋をのぞく。食べたざるそばは黒い色の蕎麦で、味はいまひとつ。これなら門前そばの方が...と思った。ツユ(汁)が盛り切りで、そば湯なんか出ないのは同じだった。

 別の「セルフ式」の店は、こちらは下手な門前そばよりずっと旨い。手打ちなど名乗らないし、いかにもの機械製なのだが、意外に美味しい。同じように機械で作る生そばだとしても、上手にゆでて、客にあわせてタイミングよく出せば、こんなにいい味になるのか、と感心した。金額が同じくらいなら、ボリュームも昼食に十分な量のある、こっちのセルフ式の方がずっといい...。

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 灯明まつりで早めに全部のそば屋を回ろうとすれば、味はともかく、簡単に食べられて、余計なことをしなくても済む、今のやり方が向いているのかもしれない。ゲームのようにかけまわるグループもある、皆さんゆっくり味わうどころではないだろうに、とも思った。それとは別に、灯明まつりに来て、皆で蕎麦を食べて帰ろうか、とお酒を飲みながら家族で団らんする姿も多く見かけた。半ざるそばの食べ歩きを競う人と隣り合わせになっておしゃべりする姿を偶然出会うと、味わい方の違いを感じたものだった...。

 セカセカした客を中心に組み立てるような扱いは、長い目で見て、あまり得にならないのでは、とも感じた。味に改善の余地がある店が増えてきて、そば好きの客に知れ渡ってくれば、信州そば全体の信用が落ちる。自分で自分の首を絞めているのかしら、と思うことも度々だった。

 その元にあるのは、1つは、門前町の地元の住人や商店に働く人たちが食べに行かないのではないか、といぶかしく思うこともある。地元の人が食べに行き、ほめる、批評する、などを活発にやってくれれば、ずいぶん改善していくと思うのだが。そんな空気はあまり感じられない...。

 ひどい店では、店員が半ざる・半かけの客を、見下すような態度をとるのをいくつか見かけた。こんな冬枯れの時期に、安いけど来てくれる客に対して、感謝こそすれ、馬鹿にすることはないだろう、といくつかの店で思った。味がいまひとつの店に限って店員の態度が大きい、サービスがいい加減だ、と思ったものである。

 とはいえ、美味しい店も半分ほどはある。会期は今度の15日(日)まで。当たり外れを覚悟して、いくつかを食べ歩きしてみたらいかが。

2015年2月 9日掲載

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